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 「うらやましい、の一言」という五十嵐太郎・東北大学准教授のコメントが書籍の帯(カバーの上に巻いた紙)に躍る。編集者にとっては、「してやったり」というコメントだ。読者がうらやましいと思うような建物を見て回り、その感激を伝えることで、もっと実際の建物に足を運んでもらいたい──それがこの企画の出発点だからだ。


 日経アーキテクチュアでは7月14日に『昭和モダン建築巡礼/東日本編』を発刊する。書店によってはひと足早く店頭に並ぶはずだ。昭和モダン建築巡礼は同誌の連載記事で、建築ライターの磯達雄氏とイラスト担当の筆者(宮沢洋)が、西から東へと戦後モダニズム建築の現況をリポートして回る企画だ。沖縄県から滋賀県までは2006年10月に『昭和モダン建築巡礼/西日本編』として単行本にまとめた。後編となる『東日本編』は、岐阜県から北海道まで28件(書き下ろし8件を含む)を収録している。

 ここでは取材のこぼれ話を何回かに分けて紹介したい。初回のテーマは、「“発見”があるから建築巡りはやめられない」。

 この連載の最大の原動力は現地での“発見”だ。作品集やインターネットで調べて、“見ないうちから知っている気分”になってしまう昨今。しかし、“名作”と言われる建築は奥が深い。行ってみると、何かしら驚くような発見がある。

 例えばディテール。この連載では「えっ、どうしてこんなところがこうなってるの?」という不可思議なディテールに出くわすことが少なくない。村野藤吾が設計した小山敬三美術館(長野県小諸市、1975年竣工)はその好例だ。

(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)


(イラスト:宮沢洋)
(イラスト:宮沢洋)

 全体がうねるような左官仕上げの壁で覆われたこの美術館。東側の外壁の上部からツノのようなものが飛び出している。どうやら、ここから雨を地面に落とすようだ。「原始的だなあ、こんなので大丈夫なの?」と思って地面の近くを見ると、壁の一部がえぐられたように削り取られている。

(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)

(イラスト:宮沢洋)
(イラスト:宮沢洋)

 それを見て、「ああ、これは雨樋から落ちた雨水で浸食されたんだな。風が吹いて水がまっすぐ落ちなかったんだ…。甘いなあ、村野藤吾」と推測した。おそらく筆者ならずとも、それを見つけた人は同じように考えるに違いない。