PR

(前のページから続く)

ジャッキで荷重を受け替えて補修

 竹中工務店は事故後、各階に36本ずつ並ぶ柱の1631カ所に上るすべての接合部を削孔するなどして調査。事故が起きた柱の接合部以外は、グラウト材が設計通りに充てんされていることを確かめた。

 圧壊した柱は、以下の手順で補修する。まず、柱の周囲に架台や油圧ジャッキを取り付ける。次に、柱に本来かかるべき荷重を油圧ジャッキに加えて、柱に働く力をジャッキで受け替える。その間に、接合部の周辺の鉄筋とコンクリートを高さ70cmの範囲にわたって除去。鉄筋を新たに配置した後、コンクリートを打設し直す。最後に、ジャッキを外して、柱に当初の設計通りの荷重が加わるようにする。

(注)取材を基にケンプラッツが作成。寸法の単位はmm
(注)取材を基にケンプラッツが作成。寸法の単位はmm
補修工事をしている「ザ・千里タワー」の19階付近。コンクリートなどを除去する際の騒音を防ぐためか、外側をシートで覆っている。2月12日に撮影 (写真:ケンプラッツ)
補修工事をしている「ザ・千里タワー」の19階付近。コンクリートなどを除去する際の騒音を防ぐためか、外側をシートで覆っている。2月12日に撮影 (写真:ケンプラッツ)

 竹中工務店は2008年12月、日本建築総合試験所の建築物構造性能評価委員会に補修計画の審査を申請。2009年1月に同所から性能評価書を受け取り、国土交通大臣の認定を再び取得した。同委員会のメンバーの一人は、ケンプラッツの取材に対して次のように答えた。「柱が圧壊した後の状態を構造解析した。その結果、ほかの柱や梁は構造耐力上、安全であることを確かめた」。

 建築の専門家からは、補修する範囲よりも下にある柱の鉄筋に異状はないのか、ひび割れが生じた周辺の柱と梁の交差部は安全なのか、といった質問が寄せられている。竹中工務店は「契約者の個人資産にかかわるので、回答は差し控えたい」と答えた。

 特定行政庁である大阪府豊中市は2月3日、建築確認を変更して新たな確認済み証を交付した。補修工事は2009年3月末までに終わる見込みだ。竣工は当初の予定通り2009年6月を予定している。

 ザ・千里タワーは、鉄筋コンクリート造の50階建てで総戸数は356戸。住友商事と阪急不動産、オリックス不動産が事業主で、竹中工務店が設計と施工を担当している。

 事故を受けて、住友商事などは2008年11月、マンションの契約者に対して契約の合意解除に応じると通知。2009年2月末まで受け付けている。契約を解除した戸数は明らかにしていない。さらに、構造耐力上の主要な部分の瑕疵(かし)担保期間を通常の10年から20年に延長するもようだ。

 同タワーの事故をめぐっては、インターネット上の複数のサイトで活発なやり取りがなされている。「事故直後、作業員は地下に避難して待機していた」、「2009年2月15日ごろの時点で約100戸の解約があった」などと記されている。

 大手建設会社が手がける工事では近年、施工ミスが相次いで起きている。

 例えば、清水建設などの共同企業体(JV)が千葉県市川市で施工していた45階建てのマンションで2007年11月、柱の鉄筋量が不足していることが判明。竹中工務店が東京都港区で施工していた27階建てのマンションでも2007年11月、設計よりも強度が2割ほど劣る種類の鉄筋を梁に誤って使っていたことがわかった。

 竹中工務店は2008年4月、本社に品質監査部を、支店に品質管理部をそれぞれ新設した。品質管理を強化した矢先に、今回の施工ミスが起きた。