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 日本の人口動態を考えたとき、2008年は住宅市場の大きな転換点だったと思う。住宅マーケットの主力だった35歳前後の人口は今後、年々減っていく。一度住宅を購入し、子育ても終えて、住宅を建て替えたり、住み替えたりする60歳前後の人口も09年から減り続ける。

 就職氷河期に代表される若年層は、十分な資金を借り入れたくても信用力が相対的に低く、住宅市場を盛り上げるだけのボリュームもない。80年代後半から90年代初頭にかけての、いわゆるバブル期に不動産を購入した50歳前後の世代は、その後の資産デフレで大きな差損を抱えている可能性が高い。右肩上がりのマーケットがあるとすれば、60~75歳くらいの世代だ。

 高齢者夫婦の持ち家世帯は、相対的に恵まれている。高度経済成長期に資産を形成し、年金も潤沢に受け取っている人が多い。運用にもよるが、金融資産や不動産も他の世代に比べてキャピタルロスが小さいはずだ。「年金が危ない」「介護に費用がかかる」と、マスコミが不安をあおることもあって、財布のひもは固い。しかし、この世代をポジティブにして、サイフを開いてもらわないと、日本経済のエンジンは回らない。

 もう一つ、東京に目を向けたとき、東京23区以外のいわゆる郊外の昼間人口が増えているというデータがある。東京都が08年に実施した調査によれば、東京西部の多摩地区では、1995年からの10年間で、昼間人口が10%以上、増えたところが多い(出典:東京の都市生活の変化と現状)。

郊外の住宅地にクラブハウスを

 そこで提案だ。郊外の住宅地に1宅地でもいいから、ゴルフ場にあるような、食堂やバーのあるクラブハウスの小型版を設けてはどうか。

 70歳以上の高齢者は、パソコンや携帯電話を駆使する若年層に比べて、情報との接点が少ない。クラブハウスは、そんな高齢者が情報を得る接点となる。ここで、床暖房やバリアフリーの心地よさを体験してもらう。住環境の質が上がれば、毎日の暮らしが豊かになり、健康にもつながることに気付かせて、リフォームや建て替えへとつなげる仕掛けだ。

 同じ1000万円を使うのでも、10回の海外旅行でパーッと使うより、1回のリフォームで住環境が格段に快適になることを選ぶ高齢者もいるはずだ。そのためには、消費の引き金となる情報としての「体験」が必要だ。

 ここまでは理想だ。クラブハウスを設けて運営する資金や、高齢者たちに情報を与え、ハウスを仕切るマネジャーも必要になる。金融危機のただ中にある現在、直接的なリターンが見えにくいこの提案を実現するためのハードルは、決して低くない。しかし、もし乗り越えれば、新たな住宅市場の創出と郊外の活性化を同時に実現できると確信している。(談)

園田 眞理子
そのだ まりこ/明治大学理工学部建築学科准教授 石川県生まれ。1979年千葉大学工学部建築学科卒、1993年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。市浦都市開発建築コンサルタンツなどを経て、1997年から現職。

<訂正あり> 初出時に筆者のプロフィルに誤りがありましたので、訂正しました。(2009年5月22日11時50分)