PR

 「計画をいったんやめた方がよい」。文化庁が7月8日に開いた国立メディア芸術総合センター設立準備委員会(座長:浜野保樹・東京大学大学院教授)で、有識者として招かれた映画監督の樋口真嗣氏はこう主張した。

旧文部省庁舎の6階にある講堂で7月8日に開かれた国立メディア芸術総合センター設立準備委員会 (写真:日経アーキテクチュア)
旧文部省庁舎の6階にある講堂で7月8日に開かれた国立メディア芸術総合センター設立準備委員会 (写真:日経アーキテクチュア)

 樋口氏は2005年公開の映画「ローレライ」や06年の映画「日本沈没」などの監督を務めた人物。「政争の具にされ、国民の不信感をぬぐえていない。なし崩しに計画を進めても、中途半端な施設をつくるだけ」というのが理由だ。

 樋口氏の発言に対して、準備委の委員である漫画家の里中満智子氏が反論した。「貴重な漫画などを保存する施設が、今までなかったのが不思議なくらい。ようやく予算が付いたのに、『いったんやめた方がよい』という言葉がマスコミなどを通じて独り歩きすると怖い」。

 里中氏の意見に対して、樋口氏は「計画がなくなってほしいとは思わない。しかし、今のまま計画がずるずると進んで、世の中の批判をかわすために善後策を講じただけの玉虫色の施設ができることを懸念する。施設の名称を変えて、イメージを一新してもいいのではないか」と応じた。

 一方、樋口氏と同じく有識者として出席した漫画家の松本零士氏は、施設の整備に前向きな意見を述べた。「若者が刺激を受けて、漫画やアニメの制作に志を持って取り組めるような施設にしなければならない。巨額の予算を投じてハコモノをつくるのだから、来館者が楽しむだけでなく、人材の育成といった『未来への触媒』としての機能も必要だ」

有識者として参加した漫画家の松本零士氏。「古いアニメのフィルムは貴重だが、可燃性なので個人で保管するのは大変だ。新たに整備する施設で保管することも考えてほしい」などと訴えた(写真:日経アーキテクチュア)
有識者として参加した漫画家の松本零士氏。「古いアニメのフィルムは貴重だが、可燃性なので個人で保管するのは大変だ。新たに整備する施設で保管することも考えてほしい」などと訴えた(写真:日経アーキテクチュア)