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「耐震壁は不要」と提訴

 しかし、考える会代表の本田清春氏ら同会の会員3人は改修工事が竣工する直前の09年3月、伊藤町長らを相手取り、約3000万円の損害賠償を求める訴えを新たに起こした。不必要なRC造の耐震壁によって、歴史的建築物の持つ文化財としての価値を著しく損ねたというのがその主張だ。原告らが根拠とするのが、独自に実施した耐震診断だ。

豊郷小旧校舎1階を改修した会議室。住民の要望で意匠を害する耐震ブレースの使用は避け、主に1階の廊下の壁を耐震壁で補強した。既存の木造間仕切り壁をいったん解体。室内側にコンクリートを打った後、廊下側に窓枠を戻し「開かずの窓」とした(写真:車田 保)
豊郷小旧校舎1階を改修した会議室。住民の要望で意匠を害する耐震ブレースの使用は避け、主に1階の廊下の壁を耐震壁で補強した。既存の木造間仕切り壁をいったん解体。室内側にコンクリートを打った後、廊下側に窓枠を戻し「開かずの窓」とした(写真:車田 保)
2階の保存教室。使われていた当時の雰囲気を残すために、最低限の補修に留めた(写真:車田 保)
2階の保存教室。使われていた当時の雰囲気を残すために、最低限の補修に留めた(写真:車田 保)

 保存運動の初期には、森野設計事務所(滋賀県草津市)が実施した公立学校の耐震診断報告を巡って、状況が二転三転した経緯がある。住民らは03年5月、イオリ建築設計事務所(大阪市)に耐震診断を依頼、同事務所は竣工当時の原構造設計図などを基に耐震診断報告書を作成した。この耐震診断で軽微な補強で済むとの判定結果を得た本田氏らは、原設計者をルーツに持つ一粒社ヴォーリズ建築事務所(大阪市)が耐震診断業務を受注した際にもその結果を伝え、補強は必要ないと主張してきたという。

 本田氏らは、情報公開請求によって入手した図面を基に訴訟を起こした。実際に建物に入ったのは09年4月末、町が呼び掛けた拭き掃除イベントでのことだ。そのときの気持ちを、本田氏はこう振り返る。「我々の学校になんということをしてくれたんだ、という悔しさが先に立った。きれいになったのを見ても、素直に喜べない」。

 一方、多くの住民がこの改修を喜んでいるのも事実だ。町総務企画課の山田氏は、「豊郷小の卒業生は学校に誇りを持っている。その誇りが、住民の思いでよみがえった」と話す。本田氏も同小の卒業生だが、長年対立してきた町との関係修復は、建物を直すように急ピッチでは進まないようだ。