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 H氏が設計を依頼された敷地には、RC造の建物の基礎が残っていた。地中に穴を開け、カメラを入れると、すき間をガラで埋めている様子が映った。しかも、残存基礎は隣地にまたがっていた。

H氏が新築建物の設計を依頼された敷地には、RC造建物の残存基礎があり、隣地にまたがっていた(資料:H氏の取材を基に日経アーキテクチュア編集が作成)
H氏が新築建物の設計を依頼された敷地には、RC造建物の残存基礎があり、隣地にまたがっていた(資料:H氏の取材を基に日経アーキテクチュア編集が作成)

 「この敷地には、建物は建てられない」。H氏はこう判断した。しかし、敷地の所有者は、残存基礎を撤去して埋め戻し、新たに建物を新築したい、と食い下がった。H氏はそれでも拒否した。隣地には、木造2階建ての店舗併用住宅が建っていたからだ。

 隣地にまたがった基礎を一部だけ解体すると、バランスが崩れ、隣地にある基礎がどのように動くか予想できない。隣地の地盤が軟弱なら、ジャイアントブレーカーなどで破壊すると振動が伝わって既存建物が倒壊する可能性さえある。H氏は頑として設計を引き受けなかった。

 その後、その敷地に建物が建てられたという話を、H氏は耳にした。残存基礎は撤去したのか。どのような設計にしたのか。H氏は恐ろしくて、その敷地を見に行っていない。