PR

日経アーキテクチュアとECO JAPAN、日経ホームビルダーの共催で2009年10月8日に東京・秋葉原で開いた「建築環境フォーラム2009」。建築家の小嶋一浩氏による基調講演では「フルイド・ダイレクション」と呼ぶ設計手法を説明した。光や音、風、人の動きなど、その場所に流れるものを読み取って設計に生かす方法だ。小嶋氏による講演の概要をまとめた。

 風や光をはじめ、その場所に、微妙に流れるものを考慮して設計を進めています。それを僕は「フルイド・ダイレクション(fluid direction)」と呼んでいます。いろいろな要因を単純にとらえて整理し、世界中の誰もが共有できるようにしたのが20世紀という時代だったと思います。例えば、交通量の計画は、ともかく渋滞しない道路がいいという前提で考えることで、世界中に同じような道路ができました。一方21世紀は、小さな流れを群として扱い、無理矢理に大きな流れに変換しなくても考えられるようになってきた時代です。それは、コンピューターに代表されるハイテクな道具の性能が良くなってきたことと関係が深いと思います。

「フルイド・ダイレクション」の考え方。大きな矢印は、物事を単純化した20世紀型の考え方。一方21世紀は、複雑な流れや要素を受け入れながら、ものをつくっていく時代になった(資料:山代悟+日高仁『アーバン・ダイナミクス』を参照してCAtが作成)
「フルイド・ダイレクション」の考え方。大きな矢印は、物事を単純化した20世紀型の考え方。一方21世紀は、複雑な流れや要素を受け入れながら、ものをつくっていく時代になった(資料:山代悟+日高仁『アーバン・ダイナミクス』を参照してCAtが作成)

 設計で図面を描いたり模型をつくったりして、施工現場で鉄やコンクリートなどで建築をつくっていきます。部材を扱っているけれども、実際に出来上がったとき、期待されていることは部材そのものではなく、内部の空気が充てんされている場所です。

 建物の内部で、いろいろな出来事が起こる。その空気の部分には構造体内部の力の流れみたいなものだけでなく、風や光、音などいろいろな流れがあって、それをどうとらえてつくっていくか、ということを、常に考えています。

 2003年に、ベトナム・ハノイに集合住宅をつくりました。旧市街の中の町家を建て替えるプロジェクトです。人口密度が高く、かつ暑い場所ですが、エアコンはほとんど使わず風通しだけで快適に暮らすための実験住宅です。4階建ての建物を建て、外と中の比率が半々になるように、立体的な中庭をつくりました。

 ここにどのように風が流れるか、設計時に専門家たちと空気の循環を解析してシミュレーションしてみました。プランを練っていたのは2000年より前ですから、こうした解析ソフトでシミュレーションするのは初めてで、実際にどれくらい結果がついてくるのか分かりませんでした。

 出来上がってから現地の人たちに、「本来、一番空気がこもってしまう奥の場所でも空気が動いていて、風が感じられるのはどういう手品を使ったのか」と驚かれました。コンピュー ターを使った解析は、実用的なものなのだと初めて感じました。