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照明デザイナーの岡安泉氏は、先駆的なプロジェクトを手掛ける建築家との協働が多く、建築ごとに様々なユニークな手法を開発してきた。その岡安氏が、自身のかかわったプロジェクトを例に挙げながら、LEDを含め、光源ごとの性質に合わせた照明デザインについて語った。以下に、パシフィコ横浜で行われた日経BP社主催、Green Device 2009のメインシアターにおける、同氏の講演「実例に学ぶ照明デザインと新光源」を採録する。


岡安泉氏。岡安泉照明設計事務所代表。1972年神奈川県生まれ。日本大学農獣医学部卒。ITL co.,LTD 、super robotなどを経て2005年に現事務所を設立(写真:吉田 明弘)


蛍光灯│輝度の低さを生かす

 蛍光灯の特徴は、まず長寿命であること。電球型は約6500時間、直管型は約1万2000時間とされる。昼白色、電球色など、色温度の幅が広く、空間の用途によって使い分けることができるのが大きな利点だ。「約85~110lm/W(ルーメン毎ワット)と光の効率が良く、輝度が低いため、建築では使いやすい光源と言える」(岡安氏)

 美容室「XEL-HA BY AFLOAT(シェルハ・バイ・アフロート)」(内装設計:青木淳建築計画事務所)では、和紙を塩ビでコーティングしたワーロンシートを用いて天井面に波状の照明器具を造作し、電球型蛍光灯とともに天井のデザインに取り込んだ。岡安氏は美容室で求められる必要基準照度は750ルクスと判断し、照明を計画した。客が天井を見上げたり、鏡に映り込んだ天井を見たりする場合が多いため、低輝度は必須条件だったという。「750ルクスの明るさを達成する場合、放電灯10灯よりも電球型蛍光灯50灯のほうが、まぶしさがなく快適な空間になる」(岡安氏)。

 新潟のオフィス「ナミックステクノコア」(設計:山本理顕設計工場)では、蛍光灯の輝度の低さと発光効率の高さを生かし、タスクアンビエントの手法で照明を計画した。天井面には基本的に照明を設けず、机上にタスクライトとなるスタンドを設置し、自由に点灯できるよう、それぞれの手元にスイッチを付けた。空間照度は250ルクス程度だが、職員の移動、作業ともに支障はない。「一般的なオフィスでは空間照度750ルクス程度が目安となるが、過剰になるケースが多いと聞く」(岡安氏)。旧オフィスと新オフィスを比較すると、同一の座席数で、照明に関する使用電力は3分の1に減少。省エネの効果も生んだ。

オフィス「ナミックステクノコア」。机上はタスクライトのスタンドで照らし、天井面にはアンビエントライトの間接光を当てて明るさを確保している(写真:吉田 誠)


 ほかに「原宿CAST」(設計:永山祐子建築設計)では、蛍光灯の発光面の大きさを生かして影のない空間を実現。そこでは、ごく細い蛍光灯の54W型のT5管を、全体に配置した。室内に用いた塗装色のN95に対して、5000ケルビンの昼白色を使い、空間の白さも引き立てている。