豊田中央研究所とサンケン電気はそれぞれ、「Naフラックス法」と呼ばれる結晶成長法で作製したGaN基板を利用し、GaN系ショットキー・バリア・ダイオード(SBD)を試作した。この試作品を、2010年2月17~19日まで東京ビッグサイトで開催されている「nano tech2010 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」に出展した。GaN基板は大阪大学大学院工学研究科 教授の森勇介氏らの研究グループが試作したもの。Naフラックス法で作製された GaN基板は既に展示されているが、その基板を利用したGaN系素子を展示するのは今回が初めてである。
Naフラックス法ではGaとNaの混合溶液にN2ガスを吹き付けてNを溶解させてGaN結晶を作製する。大阪大学らの研究グループはHVPE法で作製したGaN結晶を下地基板として利用する。特徴は厚く結晶成長させるほど転位が大幅に減少することである。なお、 Naフラックス法はもともと東北大学 多元物質科学研究所 教授の山根久典氏が開発したものである。
試作したSBDをLEDドライバ回路に利用し、実際にLEDを点灯させるデモを披露したのがサンケン電気である(図1)。LEDのドライバ回路に一般的なSi製のFRD(ファスト・リカバリ・ダイオード)を利用する場合に比べて、LEDドライバ回路の効率が2ポイント以上向上するという(図2)。一方、豊田中央研究所は耐圧1kVのSBDを試作した。今回は試作品に関する説明パネルを展示した(図3)。
4インチ基板を初展示
このほか、会場に展示されていたのは、Naフラックス法で作製したGaN基板である。出展したのは主に口径2インチと4インチの品種(図4、5)。「4インチ品を展示するのは今回が初めて」(大阪大学の森氏)である。
現在、実用化に向けた研究開発に取り組んでおり、まずはLED用途での2インチ品の実用化を目指す。GaN基板を利用し、青色LEDチップを作製する場合を想定しているため、青色の波長帯での光透過率を高める考えだ。加えて、抵抗率の低減を目指す。
コスト面に関しては、4インチで3万円という価格を実現するのが一つの目標だという。LED分野での実用化の後、パワー素子用途での採用を狙う。