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「環境配慮型建物=グリーンビルディング」の動向を伝える連載の第8回は「グリーンビルディングはどれくらいあるか」。第三者による評価・認証を受けた建物は、英国で約11万件、米国で約2500件。これに対して日本では100件に満たない。(ケンプラッツ編集部)

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<問>グリーンビルディングは、どれくらいあるのですか。

<答>環境に配慮した建物の世界共通の定義や基準はありません。建て主が独自に工夫して環境に配慮した建物を、すべて把握することも不可能です。従って、世界中にあふれるグリーンビルディングの数は、正確にはわかりません。

 特に住宅は、古くから建て主の信念のもと様々な工夫が凝らされています。日本でも既に1928年には、環境配慮型住宅として有名な聴竹居(ちょうちくきょ)が京都府大山崎町に建てられています。気候・風土と共生する日本の伝統建築と環境工学に基づく近代的設計思想とが融合した建物です。

 一方で近年、建物環境性能評価システムが普及している国では、第三者による評価・認証を受けたグリーンビルディングプロジェクトの件数が、システムを運営する各機関によって公表されています。以下にその一部を紹介します。

BREEAM (ブリーム:BRE Environmental Assessment Method)
 世界初の建物の環境性能評価システムである英国のBREEAMによる格付けを有するグリーンビルディングは、BRE Global 2009年版パンフレットによると、約11万件です。なお、50万件以上のプロジェクトが認証待ちの状態です。

LEED (リード:Leadership in Energy and Environmental Design)
 BREEAMに続いて開発された米国のLEEDに関しては、2009年4月時点における認証済みプロジェクトは2476件、認証待ちプロジェクトは2万8510件です。

 BREEAMおよびLEEDの普及は、英国内や米国内にとどまりません。ツールを必要に応じて各国の法規制や気候風土に見合うように作り変えて運用することにより、国外でも活用されています。BREEAMには、英国版やヨーロッパ版はもちろん、近年建設ラッシュに沸くカタールやアブダビ、ドバイなどを対象とした湾岸地域版があります。LEEDは、認証待ちプロジェクト総床面積の約27%を米国外のプロジェクトが占めます。

CASBEE (キャスビー:Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)
 2010年3月15日時点で、日本のCASBEE認証を受けたプロジェクトは88件です。なお、一部の自治体において、「建築物環境配慮制度」の一環として活用されている建築主の自己評価に基づく「自治体版CASBEE」にのっとった申請件数は3859件です(2009年3月末時点)。

その他の格付けシステム-Green Mark:シンガポール、LEED Canada:カナダ-
 Green Mark(以下GM)は、シンガポール国家開発省の下部組織である建築建設局が開発して運用する建物環境性能評価システムです。2005年1月に運用が始まりました。2008年度末時点で、認証を取得したプロジェクトは250件です。

 GMは、民間の組織が運営する他国の評価システムと異なり、建築に関する法律を所管する官庁による仕組みです。このため、2008年4月以降は一定条件以上の建築物は、GM最低格付け相当以上の環境性能を備えることが、建築規制法によって義務付けられました。この制度により、GMと同等の環境性能をもつ建物は、公表されている認証件数以上に増えていることでしょう。

 LEED Canadaは、2002年12月に設立されたカナダグリーンビル協会(CaGBC: Canada Green Building Council)が、米国LEEDの使用許諾を受け、カナダ用に調整したカナダ版LEEDです。2009年12月末時点における認証済み・認証待ちプロジェクトは、合計で1728件です。

(村上淑子=イー・アール・エス グリーンビル研究チーム)


<これまでの連載>
1)グリーンビルディングとは何か
2)注目浴びるグリーンビルディング
3)グリーンビルディングの先進国
4)主要国のグリーンビルディング評価
5)日本のグリーンビルディング評価
6)グリーンビルディング評価の課題
7)グリ-ンビルディングであることのメリット
8)グリーンビルディングはどれくらいあるか
9)既存ビルの環境性能を評価するには
10)グリーンリースとは何か
11)グリーンビルディングの不動産価値
12)建物の省エネ化を促進する米国の取り組み

イー・アール・エス グリーンビル研究チーム

イー・アール・エスは1998年に鹿島と応用地質によって設立されたリスクマネジメントサービスを提供する会社。エンジニアリングレポート(建物状況調査報告書)作成のほか、環境リスク、自然災害リスクの評価・診断などを得意とする。グリーンビル研究チームは建物の環境リスクを研究することを目的に2008年に発足した。環境部の中村直器氏、村上淑子氏、デューデリジェンス部の三嶋滋憲氏、伊藤健司氏、横山博行氏ら約10人からなる。同社のウェブサイトとメールマガジンで、グリーンビルディングに関する先端情報を発信している。