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米国には、建物の総合的な環境性能を評価する制度とは別に、「エネルギースター(Energy Star)」という省エネ化を促進する制度の建物版が普及している。「環境配慮型建物=グリーンビルディング」の動向を伝える連載の第12回(最終回)は、この取り組みについて解説する。(ケンプラッツ編集部)

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<問>米国で、既存建物のエネルギー性能を評価する制度が普及していると聞きました。どんな取り組みですか。

エネルギースターのロゴマーク(資料:米国環境保護庁)

<答>日本では、省エネ対応のコンピューターやコピー機などに表示されているこのマーク。米国では建物のエネルギー性能評価にも使われています。

 「エネルギースター(Energy Star)」は、1992年に米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency)が始めた、エネルギー効率の良い製品と取り組みをラベリングする活動です。省エネ効果の高い製品を認定してラベルを添付することにより、消費者が省エネ製品を容易に選別できることを意図した取り組みです。

 当初はコンピューターとディスプレーだけが対象でした。その後、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)との提携などを経て、現在は主要な家電製品、オフィス機器、照明、家庭用電子機器に加えて、住宅や商工業用建物も対象としています。

 エネルギースターが提供する「Energy Star Portfolio Manager」(以下、ESPM)は、すべての商工業用建物を対象としたエネルギー使用量などの管理ツールです。さらに、(1)建物用途、(2)運用特性、(3)エネルギーデータの3つの要件を満たした建物は、ESPMで管理しているデータを用いてエネルギー性能を評価することも可能です。評価結果は1~100で表されます。例えば「Energy Star50」とは、全米の同用途・同等の建物と比較して、エネルギー使用量に関して50%優れているという意味です。

 「Energy Star75(同用途・同等建物比75%優良)以上」の評価結果を得て、第三者機関の検証の手続きを経た建物は、エネルギースター建物版の認定の証であるラベルを獲得できます。この制度は1999年に始まりました。エネルギースター建物版のラベルは、特定の年に対して与えられます。一度ラベルを獲得した建物は、翌年からの認証申請が容易になります。2009年にラベルを獲得した建物は4638件です。1999~2009年で合計1万5037件がエネルギースター建物版のラベルを獲得しています(複数年で獲得している建物を含む)。

 なおESPMそのものは、オンラインで建物のエネルギー使用量などを管理するツールです。合理的に省エネ・省資源化を促進し、ラベリングによって投資家やテナントなどへ分かりやすく説明することを目指すもので、認証取得が直接の目的ではありません。

 全米の同用途・同等建物との比較を可能にしているのは、「商業建物エネルギー消費量調査」(Commercial Buildings Energy Consumption Survey :以下、CBECS)のデータです。これは、米国エネルギー省所管の組織である米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration)が収集して分析しています。

 CBECSは全米の商業建物の標本調査で、1979年の開始以降4年ごとに実施されています。CBECSが収集・分析するデータは、エネルギーに関する仕様を含む建物概要、エネルギー消費量、エネルギーコストです。

 データをオンラインで管理する共通のフォーマットの整備と、独立した政府系機関による30年以上におよぶ商業建物のエネルギー使用量実績データの蓄積の双方があって始めて、建物のエネルギー性能評価や認証が可能になるのです。

 エネルギースター建物版は、既存建物の運用実績を評価する仕組みとして全米で広く普及しています。LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)の既存建物のエネルギー性能の評価にも、基本的にESPMの評価結果が活用されています。

(村上淑子=イー・アール・エス グリーンビル研究チーム)


<これまでの連載>
1)グリーンビルディングとは何か
2)注目浴びるグリーンビルディング
3)グリーンビルディングの先進国
4)主要国のグリーンビルディング評価
5)日本のグリーンビルディング評価
6)グリーンビルディング評価の課題
7)グリ-ンビルディングであることのメリット
8)グリーンビルディングはどれくらいあるか
9)既存ビルの環境性能を評価するには
10)グリーンリースとは何か
11)グリーンビルディングの不動産価値
12)建物の省エネ化を促進する米国の取り組み

イー・アール・エス グリーンビル研究チーム

イー・アール・エスは1998年に鹿島と応用地質によって設立されたリスクマネジメントサービスを提供する会社。エンジニアリングレポート(建物状況調査報告書)作成のほか、環境リスク、自然災害リスクの評価・診断などを得意とする。グリーンビル研究チームは建物の環境リスクを研究することを目的に2008年に発足した。環境部の中村直器氏、村上淑子氏、デューデリジェンス部の三嶋滋憲氏、伊藤健司氏、横山博行氏ら約10人からなる。同社のウェブサイトとメールマガジンで、グリーンビルディングに関する先端情報を発信している。