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連載企画「企業不動産の環境対応」の第4回は「エンドユーザーの視点」について紹介する。オフィスビルを選定する際、環境対策を重視するテナントが増えている。テナント自らが、オフィスの内装について環境性能の第三者認証を取得するケースも出てきた(ケンプラッツ編集)


 入居するオフィスビルを選定する際に、テナントが環境対策をどの程度重視するかについて、不動産会社の森トラストが実施した調査(東京23区の大規模オフィスビル供給量調査'09)があります。これによると、「かなり以前から重視している」「ここ数年で重視するようになった」「今後は重視する」と回答した企業が、それぞれ11%、33%、45%と、合計で約9割が「重視する」を選びました。不動産を日々利用するテナントの環境意識が高まっていることが伺えます。

 ビル所有者に環境対策を期待するだけでなく、テナント自らが積極的に取り組んでいるケースもあります。シティバンク銀行は2010年7月、日本における2つの事業施設で米国グリーンビルディング協会(USGBC)の環境性能評価システムLEED-CI(リード-内装)の認証を取得したことを公表しました。この認証は、テナントとして入居する企業が入居部分において取得できるもので、水効率、材料・資源、屋内環境品質などの6項目について評価されます。テナント企業は環境配慮の証として、その結果を世の中にアピールすることができます。

 次に、不動産を日々利用する従業員個人の視点に着目してみましょう。国土交通省が10年3月に発表した調査結果(環境不動産の経済価値の評価・分析)には、勤務先の会社が環境に配慮したオフィスビルに移転した場合、従業員個人が金銭的な負担をする意思があることが示されました。この場合の環境配慮ビルは、CO2排出量が1990年と比較して25%削減できるビルと、第三者機関による環境性能認証を受けているビルを想定しています。従業員個人が毎月2000円前後を負担してもよいという内容です。地球温暖化が進行し、不動産から排出されるCO2に対する規制が強化されるなか、エンドユーザー個人の環境意識の高まりを見てとることができます。

 ただし、環境対策にも様々なものがあります。ここで注意しなければならないことは、エンドユーザーに我慢を強いる環境対策であってはならないということです。例えば、現在、多くの企業で採用されているクールビズですが、ただ冷房時の室温を28度に設定するだけではテナントや従業員の快適性を損ない、生産性を下げる結果を招きかねません。室温管理とともに、日射遮へいや自然換気といった工夫も必要です。建物の総合的な環境性能を評価するCASBEE(キャスビー)でも、室温だけでなく湿度や気流を含めて室内環境を総合的に評価しています。つまり、実際に不動産を利用するエンドユーザーの快適性や機能性に配慮した技術の活用が求められているといえます。

 前述のようにエンドユーザーの環境意識は高まってきているものの、環境や社会に配慮した不動産(環境不動産)が普及するまでには至っていません。普及を阻害している要因の一つとして、お金と手間がかかる環境対策を、当事者が避けようとしている現状があるようです。

 環境への配慮に対する意向が強まり、その意向に応える技術の活用が進み、不動産にかかわる環境リスクが低下するようになれば、金融機関なども資金を提供しやすくなります。こうした好循環を生むための対応について、企業は考えていく必要があります。

責任の堂々巡り
(資料:国連環境計画・金融イニシアティブ「Building responsible property portfolios」)

三菱UFJ信託銀行 不動産企画部 細山恵子
三菱UFJ信託銀行 不動産コンサルティング部 川本健治


<「企業不動産の環境対応」連載の予定>   *内容は変更することがあります
(1)取り巻くステークホルダー
(2)投資家・金融機関の視点
(3)行政の視点
(4)エンドユーザーの視点
(5)コスト削減
(6)最新技術の活用
(7)テナントとの対話
(8)説明責任
(9)社内体制の構築
(10)価値向上のために