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省エネ対策には、機器の運用改善、機器の更新、システムの変更の3段階があるといわれている。組み合わせれば効果はさらに高まる。企業にとっての省エネは経費削減にとどまらず、地球温暖化防止にも貢献できる合理的な対策だと位置づけられるようになっている。(ケンプラッツ編集)


 「企業における環境対応はコスト増要因である」として、経済活動との両立は簡単なことではないと考えられてきました。しかし、投資家や株主、エンドユーザーが環境意識を強めているなか、企業も環境配慮を怠るわけにはいきません。環境省が東京、大阪、名古屋の証券取引所の1・2部上場企業など約7000社を対象に毎年行っている「環境にやさしい企業行動調査」によると、ここ数年は8割を超える企業が、環境への取り組みについて「企業の社会的責任の一つである」と回答しています。また、環境に関する経営方針を制定、あるいは環境に関する具体的な目標を設定している企業は、検討中も含めてそれぞれ8割に上っています。環境問題について、企業もステークホルダーと認識を共有していることがはっきり示されています。

 では、企業はどのような環境保全の取り組みを実施しているのでしょうか。先の調査では、環境に関する具体的な目標を設定している企業の8割以上が、「印刷、コピー、事務用品等の削減」、「クール・ビズ運動の推進」と共に、「省エネルギー・省資源の推進」を挙げています。同様の他の調査でも、「省エネ(節電や節水など自社のコスト低減)」を挙げる企業が9割近くに上っています。ここでは、日本ビルヂング協会連合会が2008年にまとめた「ビルエネルギー運用管理ガイドライン」と、環境省が08年に行った「事業所における省CO2 対策等に関するアンケート調査」のデータを用いて、企業不動産における省エネへの取り組みを概観してみます。

 ビルエネルギー運用管理ガイドラインは、ビルの省エネ対策を、建物や設備機器の経年やエネルギー消費実態などに応じて、(1)機器の運用改善(調整やメンテナンス)、(2)機器の更新(部品交換、高効率機器への更新)、(3)システムの変更(設備系統の改修、先進技術の導入)の3段階のレベルに分けて整理しています。

 環境省のアンケート調査によれば、多くの事業所で実施されている省エネ対策は、主に空調と照明の設備機器にかかわる運用改善(レベル1に相当)でした。不要照明・不要時間帯の消灯、空調機器の運転時間短縮、温度設定の適正化などが挙げられています。設備機器の運用改善による省エネは、イニシャルコストをほとんどかけずに実施できます。いくつかの手法・技術を組み合わせることで効果はさらに高まります。ガイドラインには、10%近いCO2排出量削減のシミュレーション結果も報告されています。

 より大きな省エネを実現するには、部品交換や制御装置の導入、高効率機器への更新が必要になります。比較的小規模な改修で短期に投資が回収できることから、高効率機器の更新(レベル2)を実施している企業も多い結果が示されています。特に、高周波点灯型(Hf)照明器具・蛍光灯への更新は、部分的な更新を含めて8割の実施率となっています。Hf照明器具は、発光効率が高いので照明電力消費の削減や、発熱量の減少による冷房負荷の低減が可能とされています。現時点では、LED照明よりはコストパフォーマンスの点で優位と考えられているようです。

 大規模なシステムの変更(レベル3)を実施した企業も少なからずありました。なかでも空調設備にかかわる大規模な改修は、部分改修を入れると6割強の実施率となっています。具体的な技術としては、全熱交換器の導入や空調ゾーニングの細分化、テナントビルなどで有効とされる空調機のスケジュール運転制御システムの導入などで、いずれも大幅な省エネを実現する技術です。一方、高断熱ガラス・サッシの導入や建物の断熱強化といった建物本体の省エネ対策を取る企業は少数です。設備機器による省エネ対策に比べて、高い費用対効果が期待できないことがネックとなっていると思われます。なお、上述のシミュレーションでは、レベル1とレベル2の対策を実施した場合は20~26%、さらにレベル3の対策を加えた場合には30~35%のCO2排出量の削減が見込めると説明しています。

 省エネルギーへの取り組みは単に経費節減にとどまりません。近年の原油価格の急激な変動や、将来の資源価格の上昇が見込まれるなかでは、リスク管理の一環と位置づけられます。省エネを通じてCO2排出量も削減できるので、今、最も重要な環境問題である地球温暖化防止にも貢献する合理的な対策だといえます。

三菱UFJ信託銀行 不動産企画部 細山恵子
三菱UFJ信託銀行 不動産コンサルティング部 川本健治


<「企業不動産の環境対応」連載の予定>   *内容は変更することがあります
(1)取り巻くステークホルダー
(2)投資家・金融機関の視点
(3)行政の視点
(4)エンドユーザーの視点
(5)省エネへの取り組み
(6)最新技術の活用
(7)テナントとの対話
(8)説明責任
(9)社内体制の構築
(10)価値向上のために