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 東日本大震災では天井落下による死者が出た。これまでの震災でも、負傷者は数多く出ていた。にもかかわらず、安全対策は本格化しなかった。一因は、天井落下の危険性が「見える化」できていないことにある。

 「天井材が落ちて人に当たれば、どの程度のケガをするのか」という質問に、的確に答えられる者は少ないだろう。落下事故に見舞われでもしない限り、天井が抱えるリスクの高さを実感できない。だから、対策に本腰が入らない。

九段会館(東京都千代田区)では崩落した天井の下敷きとなった2人が亡くなり、26人が重軽傷を負った。遺族らは5月、落下防止対策を怠ったとして、同館を管理していた日本遺族会の会長である古賀誠衆院議員らを、業務上過失致死傷の容疑で刑事告訴した (写真:日経アーキテクチュア)
九段会館(東京都千代田区)では崩落した天井の下敷きとなった2人が亡くなり、26人が重軽傷を負った。遺族らは5月、落下防止対策を怠ったとして、同館を管理していた日本遺族会の会長である古賀誠衆院議員らを、業務上過失致死傷の容疑で刑事告訴した (写真:日経アーキテクチュア)

 東京大学生産技術研究所の川口健一教授らのグループでは、落下の危険性を実験に基づいて評価する研究を進めている。天井に用いる建材を人頭模型に落とし、最大衝撃荷重を計測。これを頭頂骨の崩壊荷重と照らし合わせて「どの素材が、どの程度の高さから落下すれば、どんな危険性があるのか」を判断するというものだ。