東日本大震災では天井落下による死者が出た。これまでの震災でも、負傷者は数多く出ていた。にもかかわらず、安全対策は本格化しなかった。一因は、天井落下の危険性が「見える化」できていないことにある。
「天井材が落ちて人に当たれば、どの程度のケガをするのか」という質問に、的確に答えられる者は少ないだろう。落下事故に見舞われでもしない限り、天井が抱えるリスクの高さを実感できない。だから、対策に本腰が入らない。
東京大学生産技術研究所の川口健一教授らのグループでは、落下の危険性を実験に基づいて評価する研究を進めている。天井に用いる建材を人頭模型に落とし、最大衝撃荷重を計測。これを頭頂骨の崩壊荷重と照らし合わせて「どの素材が、どの程度の高さから落下すれば、どんな危険性があるのか」を判断するというものだ。