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 そんなことが、本当に実現可能なのか――。会議の出席者らは懐疑的だった。清水建設では3月28日、東京電力に提案する福島第一原子力発電所の原子炉建屋カバー工事の工法について議論していた。席上、建設計画の立案を任された生産技術本部の印藤正裕本部長が披露したのは、溶接やボルトを一切使わず、かみ合わせるだけで柱と梁を接合するという常識破りのアイデアだった。

建屋カバー計画の立案から竣工までを担った清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長。大学で建築構造を専攻し、清水建設に入社。以来、施工現場に身を置いてきた。シンガポールのチャンギ国際空港第3ターミナルの現場所長などを務めた経歴を持つ。写真の模型は建屋カバーの屋根パネルを吊り込む様子を再現したもの (写真:日経アーキテクチュア)
建屋カバー計画の立案から竣工までを担った清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長。大学で建築構造を専攻し、清水建設に入社。以来、施工現場に身を置いてきた。シンガポールのチャンギ国際空港第3ターミナルの現場所長などを務めた経歴を持つ。写真の模型は建屋カバーの屋根パネルを吊り込む様子を再現したもの (写真:日経アーキテクチュア)

 水素爆発で吹き飛んだ1号機原子炉建屋を鉄骨造のテントで覆い、放射性物質が外部に飛散するのを抑制する。そんな「建屋カバー」の建設プロジェクトは、いくつもの難題を抱えていた。最大の障害は、現場でのボルト締めや溶接ができない点だ。

 通常、柱と梁の接合には人手を介した作業が不可欠だが、建屋周辺では高い放射線量が計測されている。とても長時間の作業が可能な環境ではない。ボルト締めなどの作業を極限まで減らし、作業員の被曝量を低減する妙案はないものか。

 苦心の末に印藤氏がたどり着いたのが、「人が近づかなくても組み立てられる構造を考えればいい」という逆転の発想。木造伝統工法の仕口のように、かみ合わせるだけで柱と梁を接合する「嵌合(かんごう)接合」を鉄骨造に応用することだった。

福島第一原子力発電所で進められた建屋カバーの建設工事。写真は塩化ビニル樹脂コーティングポリエステル繊維の膜を張った壁パネルを取り付ける様子 (写真:東京電力)
福島第一原子力発電所で進められた建屋カバーの建設工事。写真は塩化ビニル樹脂コーティングポリエステル繊維の膜を張った壁パネルを取り付ける様子 (写真:東京電力)