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 ロンドン・ヒースロー空港のほど近く、要塞のような灰色の建物が見える。長さ100m、幅50mに及ぶ外観は、場所柄、物流倉庫か、それとも煙突らしきものがあるから工場か、とも思われる。
 これは、テレビ放送局BスカイB(ブリティッシュ・スカイ・ブロードキャスティング)の世界的にもまれな、サステイナビリティを追求した本社屋である。スカイ放送とスポーツニュースの収録、編集および配信施設を抱え、8つのスタジオと1370人が働くオフィス、400台以上のサーバーを収容するデータセンターから成る。今年のオリンピックに向け、2010年から順次供用を開始している。

建物の向き、空間の形状、太陽の動きに連動したルーバーなど、エネルギー消費を抑えるための工夫が随所に施されたスカイ・スタジオ。手前には風力発電のタービンが見える(写真:Christian Richters)
建物の向き、空間の形状、太陽の動きに連動したルーバーなど、エネルギー消費を抑えるための工夫が随所に施されたスカイ・スタジオ。手前には風力発電のタービンが見える(写真:Christian Richters)

 一見、無骨にも見えるこの建物の意匠は、サステイナブル技術を大胆に表現しており、冒頭の煙突は、自然換気用チムニー(排気塔)である。テレビ番組を制作する巨大なスタジオの床スラブの下を、外気が通り、幅木部分からスタジオ内に入り、天井からチムニーを通って重力換気する仕組みだ。この規模の、この用途の建物で自然換気を導入するのは、外部からの騒音を考えても、大きな決断であったに違いない。重力換気が難しい夏季も、この同じチムニーを利用して換気する。

 データセンター部分は、AHU(エア・ハンドリング・ユニット)に外気を導入するエア・サイド・フリークーリングを導入して、一般的に多くなりがちなプロダクション施設のエネルギー消費量を、劇的に抑えている。具体的には、年間の二酸化炭素排出量は30.1kgCO2/m2(日本のテレビ局は約250kgCO2/m2)と予測している。ほかにも、風力発電を設けてオフィスの照明によるエネルギー需要の60%を賄う能力を確保し、雨水利用によりトイレ用水の1/3にあたる年間2400m3を節水している。

建物断面と自然換気の流れを示したモデル(資料:Arup Associates)
建物断面と自然換気の流れを示したモデル(資料:Arup Associates)