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デザインは機能主義から逸脱…1980年代:シブヤ・ポストモダン(2)

 建築家としてセゾングループに貢献した建築家の筆頭は菊竹清訓である。菊竹は、セゾングループの施設である東京・銀座のホテル西洋銀座や軽井沢のセゾン美術館などを設計したが、渋谷でもシード館、ロフト館を担当した。

西武渋谷店モヴィーダ館。設計は菊竹清訓、1986年に西武渋谷店シード館として竣工(写真:ケンプラッツ)
西武渋谷店モヴィーダ館。設計は菊竹清訓、1986年に西武渋谷店シード館として竣工(写真:ケンプラッツ)
西武渋谷店ロフト館。設計は菊竹清訓、竣工は1987年(写真:ケンプラッツ)
西武渋谷店ロフト館。設計は菊竹清訓、竣工は1987年(写真:ケンプラッツ)

 しかし、この時代の渋谷らしい高度な消費文化に対応した建築デザインは、その周辺に誕生した他の商業施設に、よりはっきりと見て取れる。従来の機能主義的な建築デザインから明らかに逸脱したものが目立つようになるのである。

電力館。設計は木島安史・第一工房、竣工は1984年(写真:ケンプラッツ)
電力館。設計は木島安史・第一工房、竣工は1984年(写真:ケンプラッツ)

 例えば、木島安史が原案をつくった電力館(設計:第一工房、1984年)は、鉄骨造の高層建築でありながら、古代ローマの建築に通じるドームを屋根に載せている。北川原温が設計した映画館、シネマライズ(1986年)は、ドレープをまとったかのような彫塑的なファサードが特徴。パルコパート2にあった飲食店、カフェボンゴ(1986年)は、飛行機の翼とローマ建築の列柱が隣合うというインテリアだった。イギリス人のナイジェル・コーツによる設計だ。そして東急会館(東急百貨店東横店)もこの時期に大改修を行い、テキスタイルのパターンのようなきらびやかな外装をまとうのである。

 こうしたデザインは商業施設のみならず、お堅いはずの官庁建築にまで及んでいく。繁華街の真ん中に出現した刃を突き出した斧のような格好の建物は、あろうことか交番なのであった(宇田川交番、設計:鈴木エドワード、1985年)。

 これらはポストモダンと呼ばれる様式の建築である。その特徴は、過去と現在、あるいは物語と現実を大胆にシャッフルして取り入れる手法にある。まるで舞台の書き割りのようなデザインだが、その虚構性が逆に時代のリアリティーを感じさせた。

 1980年代の渋谷は、ポストモダン建築の名所であった。

シネマライズ。設計は北川原温、竣工は1986年(写真:ケンプラッツ)
シネマライズ。設計は北川原温、竣工は1986年(写真:ケンプラッツ)
渋谷警察署宇田川交番。設計は鈴木エドワード、竣工は1985年(写真:ケンプラッツ)
渋谷警察署宇田川交番。設計は鈴木エドワード、竣工は1985年(写真:ケンプラッツ)

 1980年代頃の主なシブヤ建築(建築名称:設計者、竣工年)

  • 松濤美術館:白井晟一、1980
  • 松濤倶楽部:黒川紀章、1980
  • 電力館:木島安史・第一工房、1984
  • ギャラリーTOM:内藤廣、1984
  • 渋谷クロスロードビル:東綜合設計事務所、1984
  • 渋谷東急プラザリニューアル:浜野商品研究所・東急建設、1985
  • こどもの城:山下設計、1985
  • 三基商事東京支店:竹中工務店、1985
  • 渋谷警察署宇田川交番:鈴木エドワード、1985
  • 西武渋谷店シード館(現・西武渋谷店モヴィーダ館):菊竹清訓、1986
  • シネマライズ:北川原温、1986
  • カフェボンゴ:ナイジェル・コーツ、1986
  • 日本システムウエア本社ビル:レーモンド田邊設計事務所、1986
  • 西武渋谷店ロフト館:菊竹清訓、1987
  • 渋谷109-2:東急設計コンサルタント、1987
  • RE/M:小宮山昭、1988
  • 東急百貨店東横店外装改修:坂倉建築研究所、1989