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駅の変貌が再び…2000年代:シブヤ・リコンストラクション

 1960年代末に西口ビルが完成して以降、建築としては目立った動きがなかった渋谷駅だが、2000年代に入ると、再び大きく変貌を果たす。

 まずは井の頭線駅、銀座線車両基地、バス専用道の敷地を活用した再開発プロジェクト、渋谷マークシティ(2000年)の完成である。日本設計と東急設計コンサルタントの共同による設計は中庸を旨としたもので、デザイン面での主張は特に感じられない。注目すべきはこの中に、商業施設やオフィスとともにエクセルホテル東急が入ったことだ。これに続いて東急電鉄の本社跡地に、高層部に東急ホテルを収めたセルリアンタワー(2001年)も竣工。ほぼ同時期に、新南口のパサージュ・ガーデンにホテルメッツ渋谷も開業し、渋谷エリアで不足していると指摘されていたホテル機能の不足は、この時期に一気に解消された。

渋谷マークシティ。設計は日本設計・東急設計コンサルタント、竣工は2000年(写真:ケンプラッツ)
渋谷マークシティ。設計は日本設計・東急設計コンサルタント、竣工は2000年(写真:ケンプラッツ)
セルリアンタワー。設計は観光企画設計社・東急設計コンサルタント、竣工は2001年(写真:ケンプラッツ)
セルリアンタワー。設計は観光企画設計社・東急設計コンサルタント、竣工は2001年(写真:ケンプラッツ)

 2005年にはJR渋谷駅のハチ公口と南口が、ともに隈研吾のデザインによって改修される。ファサードの全面を、雲の写真をセラミックプリントで転写したガラスで覆ったもので、この雲は実際に渋谷のハチ公広場から撮影されたものだという。写真はわざとドットを粗くし、さらに分割して位置をバラバラに並べ替えている。編集されたデジタル画像の上に、空の雲が映り込むことで、ファサードには二つの虚像が重なり合う。こうして渋谷の中心にある駅の外観は、バーチャルなイメージの裏側に消え去った。

 2008年になると、東京メトロの副都心線が開通。東急東横線にも直結する新しいホームの完成に伴って、安藤忠雄の設計による地宙船と呼ばれる空間が地下に出現した。楕円球の形をした空間は、80年代に安藤が手がけた大阪・中之島公会堂改築プロジェクト、アーバンエッグ(1985年~)で既に現れていたものであり、地下深くから地表近くまでを吹き抜けでつなぐアイデアも、ここ渋谷でやはり提案している(渋谷プロジェクト、1985年~)。どちらも実現はしなかったが、この渋谷駅「地宙船」で20年越しの夢の実現を、安藤は果たしたことになる。規模はだいぶ縮小したが……。

2003年に改修した渋谷駅のファサード。設計は隈研吾・JR東日本・ジェイアール東日本建築設計事務所、竣工は2003年(写真:ケンプラッツ)
2003年に改修した渋谷駅のファサード。設計は隈研吾・JR東日本・ジェイアール東日本建築設計事務所、竣工は2003年(写真:ケンプラッツ)
東京メトロ副都心線渋谷駅の「地宙船」。設計は安藤忠雄、竣工は2008年(写真:細谷 陽二郎)
東京メトロ副都心線渋谷駅の「地宙船」。設計は安藤忠雄、竣工は2008年(写真:細谷 陽二郎)

渋谷ヒカリエ。設計は日建設計・東急設計コンサルタント、竣工は2012年(写真:ケンプラッツ)
渋谷ヒカリエ。設計は日建設計・東急設計コンサルタント、竣工は2012年(写真:ケンプラッツ)

 2010年代になると、東急文化会館を建て替えた渋谷ヒカリエ(2012年)をはじめとする駅周辺の再開発が活気付く。戦後のシブヤ建築は、東急会館の増築からその歴史が始まったが、21世紀における渋谷のアーバンリニューアルも、これら駅の建築が先導していくことになるのだろう。

 2000年代の主なシブヤ建築(建築名称:設計者、竣工年)

  • 渋谷マークシティ:日本設計・東急設計コンサルタント、2000
  • SHIBUYA-AX:みかんぐみ、2000
  • シアター・イメージフォーラム:高崎正治、2000
  • セルリアンタワー:観光企画設計社・東急設計コンサルタント、2001
  • ナチュラルエリップス:遠藤政樹・池田昌弘、2002
  • 渋谷駅改修:隈研吾・JR東日本・ジェイアール東日本建築設計事務所、2003
  • 桑沢デザイン研究所:大林組、2004
  • Q-AX:北山恒、2006
  • 地宙船:安藤忠雄、2008