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 日経ホームビルダーは、住宅の新築やリフォームで実務者が顧客から受けたクレームの事例とその教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2012年10月号に掲載した内容の一部を紹介します。



 NPO法人住宅長期保証支援センター(大阪市)は、新築住宅の建て主からの住宅相談で、住宅設備機器の建て主支給(施主支給)に関連して助言を求められたことがある。

 建て主のAさんは、契約を検討している住宅会社の見積書にあるキッチンの価格がインターネットで見た同じ製品の価格よりもかなり高いと感じ、「ネットで仕入れて支給したい」と申し入れた。しかし住宅会社の担当者が難色を示したため、「高い買い物をさせられるのは納得できない」と同センターの担当者に訴えた。

(イラスト:柏原昇店)

 同センターは回答で、「金額だけで購入を判断すると不具合発生のリスクが大きくなる」と慎重な対応を勧めた。専務理事の鈴森素子さんは回答内容の補足として、「良心的な住宅会社なら、現場搬入や施工を円滑に進める経費を考慮して価格を決めている。一方、建て主支給のウェブサイトは、トラブル対策やデメリットの情報の開示が十分かどうか、注意が必要だ」と話す。

建て主支給を断りたい時は


 ネットでの買い物が一般化して久しい。そのうえ、低迷する景気の影響で、安さに強くこだわる消費者が増えている。Aさんのように、設備などを自ら支給して工事費を安くしたい建て主は少なくないだろう。

 一方、住宅会社やリフォーム会社としては、建て主支給の要望を受け入れたくない場合もあるはずだ。顧客に納得のうえで要望を取り下げてもらうには、住宅長期保証支援センターのコメントにあるように、自社の仕入れと建て主支給で価格が違う理由を分かりやすく説明することが重要だ。実務者である山商リフォームサービス(東京都足立区)の対応事例も紹介する。

 同社は、温水洗浄便座や照明器具など完成済み製品の建て主支給は受け入れている。より大きくて工事現場での組み立てが必要な設備や家具の建て主支給を望まれた場合は、製品自体の品質は同等でも設置工事の精度が下がる恐れがあることを説明して、再考を求める方針だという。

 「例えば、図面上では矩形でも微妙にゆがんでいる現場に納めるため、設置工事の前に部品や部材の寸法を微調整することがある。建て主支給だとこうした工夫を行いにくい。現場の事情を顧客に伝えたい」と、同社取締役統括本部長兼COO(最高執行責任者)の熊谷和樹さんは話している。