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 住まいの省エネ化で、国を挙げた動きが進んでいる。顧客ニーズも新築はもちろん、将来的には既存住宅の改修という分野でも高まりそうだ。一方で、改修に関して中小規模の工務店などでは、「断熱改修は経験があるが、設備や機器の設置や補助金申請などは慣れていない」と二の足を踏みがちなプロもまだ少なくない。

 「顧客から最新の省エネ設備の相談を受けたが、十分に答えられなかった」「補助金活用と言っても経験がない」。自らの“苦手意識”をうち破ることが重要と捉えて、さまざまな取り組みに挑む工務店も出てきている。建匠(東京都目黒区)の辻隆夫社長の場合は現在、自宅の大規模改修に取り組んでいる。築30年超の2階建て木造住宅で、元々は辻夫妻と愛犬が居住。2人の娘がそれぞれ家族で戻って3世帯で同居するために、間取りの刷新や住宅性能の向上を目的としたリフォームだ。

 辻社長にとって、このリフォームはもう一つ重要な狙いがある。「顧客ニーズの増加が期待できる省エネリフォームで、実践的な経験値を上げたい」という狙いだ。「自宅なら多少の失敗は大丈夫。実験のつもりで取り組んでいる」(辻社長)。建物は内部をおおまかに3区画に分け、水まわりなども世帯別に設ける。太陽光発電パネルは、方形に近くほぼ東西南北に向く寄棟の屋根面で、東西南に均等面積で配置。各方角別に3世帯に独立した配線で振り分けることにした。エネファームも世帯別に計3基を導入。パネルの向きによる発電量の違いや世帯別の暮らし方による省エネ効果などの差を自ら体験することが狙いだ。

 リフォームを通じて設計・施工で必要な配慮を具体的に確認したほか、不慣れだった補助金申請でも、時には行政に書類の“ダメ出し”を受ける経験もしながら、勘所をつかめるようになってきたという。こうした経験を今後の顧客説明に生かそうとしている。

 辻社長のように自ら体験することで“今どきの省エネリフォーム”への苦手意識の克服に挑戦する小規模工務店は、増えてきている。石原建築(埼玉県深谷市)の石原信之代表もそんな一人で、この6月に同様の目的で自宅に太陽光発電パネルを導入したばかり。取り組みのきっかけは、久しぶりに訪ねたOB宅で、知らないうちにパネルが付いているのを発見したことだという。「ショックだった。地域に密着して私で4代目。顧客がどんどん離れてしまう危機感を覚えた」と話す。