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南側に立つ市庁舎の展望フロアから見下ろす(写真:磯 達雄)
南側に立つ市庁舎の展望フロアから見下ろす(写真:磯 達雄)
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 久留米市民会館は、菊竹が後に設計した久留米市庁舎(1994年、地上20階建て)のすぐ隣にある。大小のホールに会議室や福祉センターなどを併設した複合建築で、福祉センターは市庁舎別館に変わって現在に至る。

 プランは三角形のグリッドに乗っており、敷地の矩形に対して斜め方向の壁で機能が分割されている。

 主要な機能である大ホールは全部で1348席。照明と音響の調整室が、客席から突き出た位置に配されている。実はこれが中央から微妙にずれていて、左右の客席ブロックの大きさが違う。ステージに立つ演者も、すごくやりにくそうである。なぜ、こんなややこしいことをしたのか。

 その理由は、天井にある2枚の巨大な羽根のようなものと関係している。これが実は、音響反射板であるとともに、必要に応じて客席を仕切る可変壁でもあるのだ。

 ホールの客席数は、そこで催す予定の興行の規模によって決まる。しかし大規模な興行は年に数回しかなく、地方都市で行われる日常的な市民の催しは、小規模なものがほとんどだ。結果として、ガランとしたホールで催しを行うことが多くなってしまう。これを何とかしようというのが、可変壁のアイデアである。

 可動反射板は水平の軸を中心に回転させると壁になる。これにより、客席は3つに分割される。組み合わせも自由だ。中央部だけ使う、上手側ないしは下手側だけを使う、上手側ないしは下手側を中央部と組み合わせて使う、全部使う。いずれも客席数は異なり、想定する催しの規模に応じて選ぶことができる。

 しかしこの可動反射板は、機械のメンテナンスができなくなったことから、現在は動かしていないとのこと。市内には他の文化施設も生まれているので、客席の規模を変えて対応する必要が薄れた、という面もあるだろう。