PR

ケンプラッツと協力して、一級建築士・製図模試第2弾「現役受験生の解答とエスキース」を執筆した「教育的ウラ指導」を主宰する荘司和樹氏が、本年の一級建築士試験を振り返って検証した受験対策手法を寄稿してくれた。ポイントは、試験課題が発表されると同時に、いかにその建物種別の実例をリアルに身体に覚えこませるかだという。実際に、そうした対策が功を奏して、初受験で合格できるレベルの図面を描き切った受験生もいる。その受験生Sさんの描いた再現図面を、本人の思考プロセスをまとめた手記を含めて、試験の必勝対策術として公開する。 (ケンプラッツ)

 2009 (平成21) 年からスタートした新しい試験制度によって、一級建築士製図試験の出題内容はそれまでのパズル型から、実務性重視(リアリティー重視)型に移行し始めています。実際の施設見学、実例プラン分析を行っていない受験生にとって、図面を描くのが難しい内容へと変わり始めているといえます。与えられた課題文を解くだけの試験対策では、合格に必要な本番対応力を身に着けることが難しくなってきています。ですので、私たち「教育的ウラ指導(以下、ウラ指導)」でも試験課題が発表されると同時に、ケンプラッツなどを活用して実例を検索しています。2012年の場合は図書館でした。単にインターネット検索して得られる情報だけでなく、平面図などの各種図面がしっかり掲載されているPDFは役に立ちます。内観・外観写真のほか、構造・設備などの詳細な情報も掲載されているからです。

 製図試験の実務性重視の傾向は、業界全体のボトムアップにつながります。望ましい傾向であるといえますが、受験生たちは、この変革に翻弄されています。今回は、その具体例を一つご紹介します。

 2012 (平成24)年の製図試験課題は、「地域図書館(段床形式の小ホールのある施設である。)」がテーマでした。そして近年、注目を集めている図書館建築は、建築計画の王道とも言えるゾーニング・動線・プログラムをあえて崩すことで、公共空間としての新たな魅力を引き出す傾向にあります。公共建築のあり方・進化への挑戦と言えますが、その傾向を製図試験に当てはめてしまうと客観性のある採点方法を設定できません。なぜなら、どんなプランニングでもアリになってしまうからです。そのため、私たちも今年の本試験課題はオーソドックスな地域図書館の計画が要求されるものと考えていました。

 しかし、実際に蓋をあけてみると、前衛的な図書館をモデルケースとしたような課題が出題されたのです。そのモデルケースと思われる図書館の一つがケンプラッツでも紹介されていた「武蔵野プレイス」です。

 現在の一級建築士製図試験は、5年目はもちろん、10年目の挑戦となる受験生も少なくありません。それだけに、初受験で一発合格できる受験生は極めて少ないのが実情です。そういった状況のもと、ウラ指導の仲間たちの間で、ある初受験生(以下、Sさん)のプランに注目が集まっています。Sさんが初受験でありながら制限時間内にプランをまとめきれた要因の一つが、武蔵野プレイスの計画事例を知っていたことにほかならなかったからです。Sさんのプランの合否結果については、合格発表を待たねば確定できませんが、初受験生でありながら、2時間以内にエスキースをまとめきれたことは特筆できます。Sさんの思考プロセスは、ほかの受験生たちの試験対策にも有効に活用できるはずです。下記は、Sさんから頂いた本試験当日の思考プロセスの抜粋です。Sさんの描いたプランを再現した図面と共に公開します。

武蔵野プレイスを北側から見た夕景。公園に影を落とさず、建物右側のイチョウ並木の高さを超えないよう3層を地下に埋め、4階部分をセットバックした。外壁が地震力を負担する耐震壁付きラーメン構造を採用。室内の自由度を高めた(写真:小川 重雄)
武蔵野プレイスを北側から見た夕景。公園に影を落とさず、建物右側のイチョウ並木の高さを超えないよう3層を地下に埋め、4階部分をセットバックした。外壁が地震力を負担する耐震壁付きラーメン構造を採用。室内の自由度を高めた(写真:小川 重雄)