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 建築家の菊竹清訓(きよのり)氏が2011年12月26日に亡くなってから間もなく1年がたつ。メタボリズム、エキスポタワー、アクアポリス──。高度経済成長を背景に巨大建築を追い続けた夢想家──。そうしたイメージにくくられたまま、記憶が風化しようとしている。しかし、それは菊竹氏の一面にすぎない。

菊竹清訓氏(写真:細谷 陽二郎)

書籍「菊竹清訓巡礼」の表紙
書籍「菊竹清訓巡礼」の表紙

 日経アーキテクチュアは12月17日、書籍「菊竹清訓巡礼」を発刊する(詳細はこちら)。日経アーキテクチュアの連載企画「建築巡礼」の特別編として、菊竹氏が手掛けたプロジェクトを建築ライターの磯達雄氏(文章担当)と筆者(宮沢洋、イラスト担当)の2人が訪れ、そのリポート記事を竣工年順に収録したものである。

 25本のリポート記事のうち、過去に日経アーキテクチュアに掲載した記事が5本、残りの20本は書き下ろしである。さらに、菊竹清訓建築設計事務所の協力を得て、雑誌未発表作を含めた全プロジェクトの現況を可能な限り、調べた。現地を訪れた建築は80件を超える。

 本のつくり手自身が言うのもどうかと思うが、相当のエネルギーがかかっている。業務命令であればここまではやらなかっただろう。仕事という枠を越えて、やらずにいられなかったからやった、というのが本当のところだ。本をつくっただけでは満足できず、この気持ちを多くの人と共有したいと出版記念イベントまで企画してしまった(詳細はこちら)。

 我々2人をそこまで引き付ける菊竹建築の魅力とは何か──。磯氏の熱い思いは同書のあとがきを読んでいただくとして、ここでは筆者が菊竹建築に引かれる理由を書くことにする。その魅力の根源はずばり、巨大建築とは対極にあるヒューマニティーである。