「改修か建て替えか」をめぐって議会が紛糾している鳥取市庁舎の再整備問題。2012年11月に日本設計がまとめた報告書のなかで、「改修に必要な建設費が当初概算の20億8000万円から31億円へと大幅な増額になる」と指摘された当初改修案の提案者、山本浩三氏から日本設計に対する反論が本誌に寄せられた。
鳥取市が新庁舎建設基本計画の素案を発表したのは2011年10月のこと。本庁舎と第2庁舎などの機能を統合し、現庁舎から1.5kmほど離れた場所に新庁舎を新設する考えを示した。同案では、延べ面積約2万3500m2の庁舎の建設費と設計・監理費の合計を約74億8000万円と試算していた。
これに対して山本浩三都市建築研究所の山本浩三氏が、市議会の一部会派からの依頼で対案となる改修案を作成。既存の本庁舎を免震改修したうえで、第2庁舎の使用を取りやめて、本庁舎の南西側の駐車場に第3庁舎を新たに建設する案を議会に提出していた。山本氏の試算では、本庁舎の免震改修や第3庁舎の新設などに要する建設費は合計約20億8000万円だった。
日本設計が「総事業費は43億円に上る」と試算
建て替えか改修かで意見が二分されたなかで鳥取市は、12年5月に住民投票を実施。山本氏が作成した免震改修案が採択された。しかし同年11月、市の依頼で免震改修案の妥当性を調査・検討していた日本設計が報告書をまとめ、そのなかで改修を前提にした場合の総事業費は約43億4000万円になると試算。建設費が約31億円、その他、土壌汚染対策費や埋蔵文化財調査費などの費用が約12億4000万円になると見積もった。同報告書で日本設計は、山本氏の免震改修案では、市が通常の業務を行いながら改修工事を実施することが困難であるといった問題点も指摘した。
これを受けて鳥取市の竹内功市長は同年12月20日、「住民投票で選ばれた『現本庁舎の耐震改修および一部増築案(2号案)は実現できないことが明らかになりました』というコメントを発表した。市は13年1月16日、新たに有識者による「市庁舎整備専門化委員会」を設置。これまでの市庁舎整備の調査検討の結果や、議論の経過を踏まえ、市庁舎整備の今後のあり方について改めて調査・審議を行うことを決めた。市庁舎整備計画は、事実上振り出しに戻った形だ。
改修案を設計した山本浩三氏は、日本設計が市議会に提出した報告書に対して、「事実誤認があり、恣意的な部分が見受けられる」と反論している。以下は、山本氏へのインタビューだ。