故・坂倉準三氏の代表作の1つ、「神奈川県立近代美術館」が廃止の危機に直面している。神奈川県は2月18日、2012年度より策定を進める「緊急財政対策」の取り組み状況を発表。42カ所の県有施設に対して廃止や移譲を検討している。その中で、3館に分散している県立近代美術館については、鎌倉本館を廃止して残りの2館に機能を集約する方向で検討が進んでいる。
同館の鎌倉本館(神奈川県立近代美術館 鎌倉)は1951年、鎌倉市雪ノ下にある鶴岡八幡宮の敷地内に開館した。戦後日本初となる公立の近代美術館だ。設計は坂倉準三建築研究所が担当した。鉄骨造2階建て(一部中3階)の構成で、延べ面積は1576m2。近代建築の記録と保存を目的とする学術団体DOCOMOMO Japanが「日本の近代建築20選」に選出するなど、建築界での評価は高い。
鎌倉本館は、県が鶴岡八幡宮から借りた土地に建てている。この定期借地権契約が期限切れとなる15年度末に鎌倉本館を廃止する方向で調整を進める。廃止後の建物利用については「白紙の状態」(県生涯学習課)。同館では13年1月、利用者に対して緊急財政対策に関するアンケートを実施しており、今後、県が取りまとめて検討の材料とする。