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 なるほど……ただ、「メニュー」と言われても「どれが、どこに強くて、何が不得意か」という具体的な内容がわからなければ、選びようがない。

 そこで、3つの地震対策の特徴を調べてみた。

  耐震 制震 免震
コスト 比較的低コストで高い耐震性能を持たせられる(耐震等級2、耐震等級3) 現場規模(設置数)によりコストが変わる 大規模工事が必要なためコストは大きい
立地条件 問わない 問わない 軟弱地盤では使用できない
室内の揺れ 周囲と同様の激しい揺れを感じる 周囲よりも感じる揺れが軽減する。特に2階 ほとんど揺れを感じない
余震対策 くり返す余震により建物の破壊が進行 くり返す余震による建物の損傷を押さえられる くり返す余震にも、建物はほとんど損傷しない
メンテナンス 基本的に必要ない 製品によっては必要 定期的なメンテナンスが必要
リフォーム 比較的、対応しやすい 比較的、対応しやすい 基礎からの改修が必要なため、コストがかかる

 つまり、どの地震対策にも、それぞれにメリット・デメリットがある。戸建て住宅に対しての普及状況も異なっている。

 耐震は、すべての建築物に必須の要素であり、戸建て住宅に必須の地震対策として、広く採用されている。制震は、以前、高層マンションなど大規模建築物への採用例が多かったが、近年は戸建て住宅への採用が急増している。免震は、最も効果的な地震対策と考えられ、大規模建築物を中心に採用されており、戸建て住宅の採用は極端に少ない。

 仕組みも、普及状況も、コストも、耐久性も、設置条件も異なる3つの地震対策。条件によって違ってくるそれぞれのメリット・デメリットと、望んでいる性能のレベルやかけられるコストなどをきちんと照らし合わせて、最も「自分が建てたい家」に合った地震対策を選ぶ。なるほど、だから「3つのメニュー」というわけだ。

 そこで、3つのメニューの内容を見比べ、得られる性能と予算のバランスを考えてみると、「木造二階一戸建て」の場合、いま急増中の「制震」が気になる。では、一戸建て向けの「制震」の中には、具体的にどんなメニューがあるのだろう。

 五十田教授はいう。「現在、巷にはさまざまな制震構造部材が出回っていますが、残念ながら、いいものも悪いものもある玉石混淆の状態です」。

 いいものも悪いものもあるって……どういうこと?

 「制震は意外と難しい仕組みなので、ある程度の技術力がないと、本当に機能するかどうか、判断が難しいのです」(五十田教授)。

 では、どうすれば「いいもの」を選べるのだろう。

 耐震補強・改修の指針を出している一般社団法人の日本建築防災協会では、ルールを作り、制震構造の評価を行っている。また、耐震補強・改修は、都道府県などからの補助金の対象となる。よって、地方自治体では、大学など公の研究機関の研究者や構造設計者を集めて、その制震工法が適切なものかどうか評価する委員会を設け、評価している。これらの団体の認定を受けたものであれば、信頼できる制震構造と言えるわけだ。