接合がしっかりしていないと衝突
木造住宅が地震で倒壊する様子をシミュレーションできるソフトの「ウォールスタット」(日経ホームビルダー4月号の本連載参照)で、増築した住宅を揺らすとどうなるか。ソフトを開発した中川さんに相談したところ、栗原市の住宅とは異なる5パターンのモデルに、4種類の地震波を入力した計20のシミュレーションを実施してくれた。
以下の図はその一部で、阪神大震災のときにJR鷹取駅で観測された地震波を入力したものだ。
5パターンは面積と形状が同じで、母屋(右半分)と増築部(左半分)の評点とつなぎ方を変えている。図中に示した評点は偏心低減を反映させていないので、正式な値より多少高めだ。必要耐力は「重い建物」、外壁は全てサイディング、床面積は母屋が47.2m2、増築部が34.8m2だ。
このうち、母屋と増築部が衝突したのはパターンA1(評点:全体=1.08、母屋=1.50、増築部=0.48)とC1(全体=0.71、母屋=0.38、増築部=1.02)。どちらも、母屋と増築部は軸組を共有して、クギ打ちの桁でつないでいる。
A1、CIとも、最初の揺れで母屋と増築部の接合部が離れ、次に母屋と増築部が衝突して評点の低い方が跳ね返された。
中川さんは「評点の低い方の耐力は揺れだけで失われているが、衝突しなければ倒壊には至らなかった可能性がある。衝突が倒壊の一因となる解析例を示せた」と話す。
なお、シミュレーション画像の壁の色は損傷程度を示す。グレーは健全、黄は少し損傷したが強度はまだ保っている、オレンジは損傷して強度が下がっている、赤は強度を失った状態だ。また、シミュレーションは屋根のある状態で揺らしているが、掲載した画像は接合部が見えるように屋根を省略した。