1.0を下回り接合部が強いとねじれて倒壊
A1とほとんど同じ評点のBは、増築部の接合部に軸組を設けて、クギ打ちの床でつないだ。母屋と増築部の構造が独立した仕様だ。
母屋と増築部は衝突せず、倒れなかった母屋の傾きと変形量はA1より小さくなった。衝突による母屋への影響がこの差に表れている。
パターンBのシミュレーション結果。まず増築部と母屋をつなぐ桁が壊れ、評点の低い増築部がY方向に大きく傾いて倒壊した。ウォールスタットver.2.0.2に地震波「JR鷹取」を入力(資料:中川貴文)
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パターンBのシミュレーション動画(動画:中川貴文)
パターンBの平面図(資料:中川貴文)
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A2はA1と全く同じ評点で、母屋と増築部をつなぐ桁をホールダウン金物で強くした。C2とC1も同じ関係だ。
全体の評点が1.0を超えるA2は倒壊を免れ、1.0を下回るC2は大きくねじれて倒壊した。
C2は評点の高い増築部が、評点の低い母屋の道連れになって倒壊した格好だ。日経ホームビルダー5月号の本連載で、母屋と増築部の評点に差がある場合は、全体の評点を1.0以上にして母屋と増築を強固につなぐ必要があると伝えたが、それを裏付ける結果だ。
パターンA2のシミュレーション結果。接合部が壊れず全体で持ちこたえた。増築部の方が変位量は大きい。ウォールスタットver.2.0.2に地震波「JR鷹取」を入力(資料:中川貴文)
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パターンA2のシミュレーション動画(動画:中川貴文)
パターンC2のシミュレーション結果。接合部は壊れなかったが、評点の低い母屋に引きずられるように全体がX方向とY方向にねじれ、全体で倒壊した。ウォールスタットver.2.0.2に地震波「JR鷹取」を入力(資料:中川貴文)
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パターンC2のシミュレーション動画(動画:中川貴文)
5棟を同時に揺らしたシミュレーション動画。左奥はパターンC1、右奥はパターンC2、左中央はパターンA1、右中央はパターンA2、左手前はパターンB(動画:中川貴文)
河合さんは日経ホームビルダー5月号の本連載で、地震波がX方向に入るよりY方向に入る方が、被害は大きくなるとも指摘した(XYの方向は平面図参照)。
5パターンの各方向の変形量は、その指摘と同様の傾向を示している。