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好評発売中の書籍『まちづくり:デッドライン』では、多くの地域で衰亡の危機にある中心市街地や、まちなかの商店街が持つ共通の課題を整理している。その上で、苦境から逆転回復するための方法と、その萌芽と見ることのできる6つの事例を解説している。補助金頼みで「商い」の本質を見失うまちづくりに向かいがちな状況に警鐘を鳴らす著者陣、木下斉氏と広瀬郁氏に、持続的な発展を志向するための「事例の読み解き方」を解説してもらう。


 書籍『まちづくり:デッドライン』に挙げた事例は、筆者(木下)が提唱してきた経営の観点からの原理原則と一致する部分が多い。それぞれのキーマンとの出会いから、考え方は間違っていないと意を強くする結果になった。幾つかのエリアのまち会社とは、アライアンスによる共同作業にも乗り出している。

 建築でも同じはずだが、街づくりで犯していけないのは、「結論」をまねする過ちだ。類型化による事例の分類なども解決策を与えてくれるわけではない。外部環境がどうであっても、成功するか否かは事業体の中核チームの突破力に関わるからだ。だから、商圏や競争環境などからの分析以上に、どのような人間が、どのように立ち回ったのか、といった観点でプロセスを知るほうが参考になる。

 事例を読解する前提として、キープレーヤーである不動産オーナー、商店経営者、消費者などの関係からなる「街の経済活動」の枠組みを知り、それぞれの行動がどう影響し合うのかといった知識も欠かせない。

 そうやって生まれた事業の結果を観察し、ヒト(人材)、モノ(建物)、カネ(資金)といった経営資源の投入に、どのような判断が働いたのかを想像し、成功事例の共通性を発見できるようになる必要がある。以下に、木下、広瀬による3つの事例に対する「レビュー」の要約を掲載する。合計6つを取り上げている事例の詳細、およびレビューの本文については『まちづくり:デッドライン』を読んでほしい。

(木下斉=エリア・イノベーション・アライアンス代表)


『まちづくり:デッドライン』解説部分
製造業などの経営の説明によく用いる[バリューネットワーク]の考え方を応用し、事業体としてのまちの実像を描き出している(資料:日経アーキテクチュア)
同・事例部分
全国各地の6つのまちづくり事例を解説し、本書独自の観点から著者2人による「レビュー」も行っている(資料:日経アーキテクチュア)

【告知】 建築家の藤村龍至氏と、『まちづくり:デッドライン』の著者、木下斉氏・広瀬郁氏によるトークイベントを開催します(事前申込制)。

・日時:2013年8月19日(月)19:00開演(21:00終了予定)
・場所:東京 ユビキタス協創広場 CANVAS(東京都中央区新川2-4-7)

詳細はイベント案内・申込サイト(http://www.zusaar.com/event/931004)をご覧ください。



事例1●枚方宿くらわんか五六市、鍵屋別館(大阪府枚方市)


 2007年3月から毎月1回、旧街道沿いにある商店の軒先や駐車場を無償で借り、地元実行委員会が主催して青空市を開いている。13年にはエリア内の建物を改修し、工房兼シェア店舗を開業した。そのテナントを青空市の出店者などから選抜している。

 枚方市が景観保全事業のための調査を始めた1998年から、都市計画家の加藤寛之氏(サルトコラボレイティヴ)が街に関わってきた。後に青空市を提案し、出店者の選別や店に対するアドバイスにも携わる。改修事業では企画・設計から運営までを手掛けている。

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A・B:「五六市」の様子。現在は200余りの出店がある C・D・E・F:築40数年になる鍵屋別館の内観。5階建てビルの1~2階(12区画)を改修し、ものづくりの様子を見せる店舗などを開設した。上階に順にテナントフロアを展開する事業計画になっている(写真:宮田昌彦)

●青空市からの起業

 青空市を利用し、テストマーケティングと出店者の育成を併せて行いながら、店舗展開につなげている。投資を最小限にして起業できる市や屋台から開始し、街に関わる商店経営者や消費者の新陳代謝を着実に進めているモデル事例と位置付けることができる。

 また、実行委員会と模範参加者が連携し、毎月の青空市の開催時に個々の店のクオリティーをチェックして回り、商品の陳列方法などの見直しをアドバイスしている。街の将来を考慮しながら出店者を選別するなど、経営改善を続けている点が評価できる。(木下)

●コミュニティーの形成

 1-2階を「工房兼シェア店舗」と呼ぶのは、飲食を含む製造小売り業態を重視する姿勢の表れだろう。製品を仕入れて、そのまま販売する店は魅力が乏しくなりやすい。自ら原材料を仕入れて加工・販売する製造小売り型の起業者は青空市の出店者でも主流となっているはずだ。

 今後、3階はカフェ、4-5階はシェア住居にする計画だという。上下の使い分けはセオリーどおりだが、間にカフェを挟んでいるのが特徴だ。店舗のテナントや客、住居の入居者などがそこでつながりを持ち、コミュニティーを生むための場となることが期待できる。(広瀬)