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宮大工3社に分離発注

 超短工期を達成するために、宮大工への発注を水平構面を境に上下それぞれに1社ずつ、2社に分離発注した。宮大工1社にかかる負担を分散するためだ。さらに、通常は各宮大工がそれぞれ担う木材調達を、別の1社にまとめて発注した。元請けの清水建設にとっては調達リスクを負うことになるが、しっかり管理できればその分、宮大工は加工・組み立てに専念できて短工期が望める。

 加工はそれぞれの宮大工により、大部分の部材を現場乗り込み前に済ませた。また、複雑な小屋組みの施工がネックになると予想されたので、分離発注した上部と下部の施工の連携を確実なものにするために、現場搬入前に屋根部を仮組みした。

 水平構面直下の梁は下部担当の宮大工によるもので、そこから束建てして上部構造を組み立てる。従って仮組みは両社の共同作業だ。3月末に下部担当の加藤工匠(山形市)から取り合い部の梁部材が、上部担当のモトタテ(酒田市)のヤードに送られ、5月上旬に小屋組みが全て組み上がった状態で地組み検査を実施した。その成果もあり、現場搬入後の部材の不具合は全くないという。

現場搬入前に、山形県酒田市で行われた屋根部の仮組み状況。左右写真とも2013年5月13日撮影(写真:木内修建築設計事務所)
現場搬入前に、山形県酒田市で行われた屋根部の仮組み状況。左右写真とも2013年5月13日撮影(写真:木内修建築設計事務所)

現場搬入前に、山形県酒田市で行われた屋根部の仮組み状況。左右写真とも2013年5月13日撮影(写真:木内修建築設計事務所)

 建物内部に化粧材の多いこのような工事の場合、素屋根(建物全体を覆う仮設の屋根)をかけて化粧材を保護するのが一般的だ。ここでは、設置と撤去に時間がかかることや、クレーンによる資材投入ができず、スペースが狭くなって作業性も落ちることから素屋根は採用しなかった。

 その代わりに、天井一面に平らに張られている水平構面に仮設のシート防水を施すことで、化粧材を雨から守っている。新しい耐震構造要素を施工計画上でも生かしたかたちだ。また手順調整によって水平構面上下での同時施工も可能にした。

現場で組み上がった小屋組み。床のように見える水平構面は施工計画でも役立てた(写真:勝田尚哉)
現場で組み上がった小屋組み。床のように見える水平構面は施工計画でも役立てた(写真:勝田尚哉)

 現場では2013年8月4日に無事、上棟し、12月末の建物本体の施工完了に向けて仕上げ工事などを急ぐ。