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流線型のロングスパンの屋根

 流線形のロングスパンの屋根が、この建築の特徴である。ロングスパンの屋根はアーチ構造を用いられることが多く、その場合アーチの支点に生じる反力に耐え得る架台や引張材が必要となる。しかし、屋根の施工性を考えると、屋根とこの支持構造の相互依存を最小限、すなわち、別々にしても成立する構造とすべきであり、そのためアーチではなく、連続トラスが採用された。この連続トラスは、大スパンにもかかわらず、3カ所のみの支持点で支持されている。

建設中。屋根が3カ所の支持点で支えられていることがわかる(写真:Keith Paisley)
建設中。屋根が3カ所の支持点で支えられていることがわかる(写真:Keith Paisley)

 屋根は、長辺方向だけでなく、短辺方向にも大きなスパンが要求された。中央部分では長辺方向の梁せいを利用したトラス断面としてスパンできるが、両翼に向かって屋根が薄くなる部分ではその手法は適用できない。最終的には、傾斜したアーチ形状を片持ちの翼部に配置することで、屋根が自立できる構造とした。

屋根の構造図の一枚(資料:Arup)
屋根の構造図の一枚(資料:Arup)

 構造の自重を軽くすることも重要なため、各部材の耐力を最大限に使用する(部材耐力に対し、95%の応力を達成)、無駄のない設計とした。その結果として、効率的で優雅、かつ施工性の高い構造を実現した。

 風に対する検討も屋根設計上の大きな課題であった。屋根の風荷重は、(1)基部もファサードもない建設途中、(2)オリンピック会期中の仮設座席のある状態、そして(3)仮座席を撤去し常設ファサードを設置した最終的な状態、3段階それぞれで異なる荷重となり、全てについて耐え得る設計とする必要があったためだ。これには、風洞実験を行い、屋根面の各所の風荷重を測定して対応した。

動線部(写真:Hufton+Crow)
動線部(写真:Hufton+Crow)

 もう一つ、エンジニアによると、この施設で他に困難を極めたのは飛び込み台の設計だったようだ。この大空間の中ではほんの一部で見落とされがちだが、床スラブから、形状を少しずつ変化しながら10m立ち上がり、さらに踏み板が10m突き出したコンクリートとなっている。「ライノセラス」と呼ぶソフトウェアを使いながら、補強筋は標準品で対応し、形状はハディド氏の要求に叶うように、と、建設時に特殊な工程が増えないような配慮を行った、とのこと。

実は設計にかなり苦労したという飛び込み台(写真:Arup/Thomas Graham)
実は設計にかなり苦労したという飛び込み台(写真:Arup/Thomas Graham)