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地域に愛される資産に

 2013年9月現在、この施設の仮設観客席の解体工事が進んでいる。オリンピック用の仮設は、簡単に解体工事ができるよう、ボルト接合を多用した設計がなされ、溶接などを極限まで減らしたそうだ。観客席部分は組み立てて、またどこかの施設で使えるという。

ハディド氏の当初の完成予想図(資料:London 2012)
ハディド氏の当初の完成予想図(資料:London 2012)

 アラップのエンジニアは、「この仮設部分が設置された状態は、“アヒルの子”だと考えていた。将来、美しい“白鳥”になると思って」と語っている。そんな“アヒルの子”だったことは、この施設が皆から愛着を持たれるための配慮だったのかもしれない。建築が長く愛されながら使われるよう、プログラムを検討するのは建築に携わる者の使命でもある。オリンピック開催期間の数週間より、建築の命はずっと長いのだ。

 このプールは2014年春、2500席の市民水泳競技場に生まれ変わって再オープンする。ハディド氏が最初に目指した造形美――水の流動性に着想を得た形状――を備えて。

菊地雪代(きくち・ゆきよ)
菊地雪代(きくち・ゆきよ)アラップ東京事務所シニア・プロジェクト・マネージャー。東京都立大学工学研究科建築学専攻修了、設計事務所勤務を経て、2005年アラップ東京事務所に入社。一級建築士、宅地建物取引主任者、PMP、LEED評価員(O+M)。アラップ海外事務所の特殊なスキルを国内へ導入するコンサルティングや、日本企業の海外進出・外資系企業の日本国内プロジェクトを担当。