PR

2050年の東京とプログラム

 日本の人口は今年をピークとして以後減少に向かう。その減少率は世界先進国の中でも最大で、2050年には現在人口1億2千万人が1億人になるという。15%以上の減少率である。もちろん、人口減少は地方小都市においてより顕著であり、東京は若干緩慢であるという。しかし少子高齢化は当然並行して進み、特に東京住民の高齢化は高いパーセンテージで進むという。そのことは税収入の退化、医療費の増加化を意味し、国家、地方自治体に大きな負担を与えるものであることは想像に難くない。それは直ちに巨大施設の維持、管理費の問題としても現れる。

 今回のコンペ案はすべて与えられたプログラムに基づいてデザインされたものであるので、この項の論考はむしろプログラムについての考察であると言ってよい。まずプログラムの第一の特徴は8万人の観客を収容する全天候式の施設を要求しているということである。多くの競技、例えばサッカーもラグビーも雨天でも行うスポーツであるから必ずしも全天候型である必要はない。したがってプログラムの解説にあるように、スポーツ選手以外にアーティストのパフォーマンス、またはコンサート、更には広義の文化的行為の活用をこの全天候施設に期待しているようである。

 しかし8万人もの観客を動員し得る、あるいはサッカー場の広さを要求するパフォーマンスはロックコンサートくらいしかない。

 現代の若者たちは特性の一つに、車離れ、旅行離れ、スキー離れ等がある。次の数十年間、ロック離れが進まないという保証も全くない。

 また、プログラムには一見、スポーツ競技運営のためのサポート、ホスピタリティ機能に対し膨大な面積が求められているが、それはほとんど収益を生まない部分である。店舗、レストランも、要請されている規模はプログラムからは判然としないが、かなりの面積が見込まれている。東京体育館ではアクセスと見晴らしのいいところにやっと1箇所、レストランを設けることができたが、総床面積は200m2である。店舗はない。

 一方プログラムでは800~900台の駐車能力のある規模の駐車スペースが要求されている。六本木ヒルズは今年創立10周年を迎えたが、年間平均来場人数は約4千万人という。かつて故森稔社長が私に述懐したことに、地下駐車場をつくり過ぎたという言葉を想い出す。六本木ヒルズの駐車場台数は、ホテル、マンションを除くタワー部分で約1,000台である。

 また、プログラムによれば、この施設の総床面積は29万m2 になる。その規模は国立代々木競技場の8倍、東京国際フォーラムのそれの2倍を超す。この巨大で、様々な複合施設を維持していく上で必要なエネルギーの消費量、管理に必要な人件費、それらを賄う収入の見通しと、その見通しを支える将来の市場性等について、この施設運営者は都民に対して充分な説明責任があるのではないだろうか。何故ならばその可否は都民が将来支払う税に密接に関わりあっているからである。換言すれば、17日間の祭典に最も魅力的な施設は必ずしも次の50年間、都民、住民にとって理想的なものであるとは限らないからである。

 さらに重要なことは、既に述べてきたように濃密な歴史を持つ風致地区に何故このような巨大な施設をつくらなければならないのか、その倫理性についてである。そしてその説明は現在の我々、将来の都民だけでなく、大正の市民にまで及ばなければならない。何故ならば神宮外苑、内苑の造営には、当時唯一の言論のメディアであった新聞も含めて、国民、市民の意見も活発に反映されていたからである。その造営は単に一群の識者によって施行されたものではない。