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日経ホームビルダーは、住宅の新築・リフォーム時に実務者と顧客の間で発生したトラブル事例とその教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2013年11月号の掲載内容を紹介します。

 ドンドンドンと、腹に響く重低音。隣室から、騒々しい音楽が聞こえてくる。建て主のAさんは、リビングのテレビの音量を上げてつぶやいた。「うるさくて聞こえやしない」

壁や窓の仕様によっては、建材メーカーのカタログの値に基づく遮音性能を必ずしも実現できるとは限らないことに注意したい(イラスト:柏原昇店)
壁や窓の仕様によっては、建材メーカーのカタログの値に基づく遮音性能を必ずしも実現できるとは限らないことに注意したい(イラスト:柏原昇店)

 二世帯住宅を新築したAさん一家。息子夫婦の希望で子世帯側にオーディオルームを設けた。親世帯のリビングとは隣合わせの配置だ。

 息子夫婦を呼び、音の漏れ具合を聞かせると、予想外のことに彼らもびっくり。簡易な騒音計で測ったところ、65dBもあった。オーディオルーム内での計測値は100dB。35dB程度しか遮音されていないことになる。

 住宅会社B社からもらった建材メーカーのカタログには、単体遮音性能D値35、総合遮音性能D値60とある。単体遮音性能は、部材単体の性能を表し、総合遮音性能はそれを実際に使った場合に壁や床、天井の遮音性能も加味した性能を指す。

 Aさんの息子は「部屋全体で60dB低減されるはずなのにおかしい」と首を傾げた。Aさんが問い合わせると、B社の担当者は「総合遮音性能は参考値のようなもの。メーカーが試験で確認した単体遮音性能は満たしている」と素っ気ない。

 困り果てたAさん一家は、住宅トラブルを扱うNPO法人住環境健康情報ネットワーク(愛知県一宮市)に相談。理事長の中井義也さんは「契約時にB社からどのような説明を受けたのかを確認しながら交渉するしかない」とアドバイスした。