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毎秒0.5~1mmの速さでそろりと移動

 1回目の曳き家は11月11日に開始。11月19日までの休工日を除く実質8日間で44m移動した。建物の総重量は5000t。油圧式の推進ジャッキで総重量の3~4%に相当する200t弱の水平力を加えて、毎秒0.5~1mmの速さで動かした。

 「見ていても動いていることが分からないくらいのゆっくりとしたスピードだ。ジャッキの油圧や建物の変位量を一元管理して、不具合が起こらないよう慎重に作業している」と、大成建設の小倉学作業所長は言う。

 曳き家に先立って、大成建設は12年7月以降、旧館1階の床や梁の下に、厚さ75cmほどのプレストレスト・コンクリート製の「マットスラブ」と呼ぶ補強床を順次、構築。マットスラブの下に仮受けジャッキを据え付けて建物の重量を受け替えた後、既存の柱をワイヤソーで切断した。

 その後、地上部にレールを敷設して、直径60mmのころ棒を介した計95台の移動台車に建物を載せ、後端部から推進ジャッキで水平方向に押した。推進ジャッキの数は15台。1回のストロークで建物を約350mmずつ動かした。

レール上にころ棒を並べた移動台車。1台当たりで平均50t強の建物重量を支える(写真:日経アーキテクチュア)
レール上にころ棒を並べた移動台車。1台当たりで平均50t強の建物重量を支える(写真:日経アーキテクチュア)

移動台車を押す推進ジャッキ。ストロークが200mmのジャッキを2台つなげた(写真:日経アーキテクチュア)
移動台車を押す推進ジャッキ。ストロークが200mmのジャッキを2台つなげた(写真:日経アーキテクチュア)

推進ジャッキは18列あるレールのうち、15列のレールの後端部に設けた(写真:日経アーキテクチュア)
推進ジャッキは18列あるレールのうち、15列のレールの後端部に設けた(写真:日経アーキテクチュア)

 「ジャッキによる押し出し作業を1日に17~20回繰り返して、建物を1日当たりおよそ6mずつ移動させた」(小倉所長)。建物の移動中は、30人ほどの作業員を床下や周囲に配置。移動に合わせてころ棒を盛り替えたり、位置を微調整したりして、建物がスムーズに動くように気を配った。