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視点2 入居者のライフスタイルに合わせた設計を

 極端な例からお話します。ある運営法人が世界の五つ星ホテルや豪華なリゾートホテルをイメージして、田畑が広がる地方都市の郊外に豪華な外観を持つ高齢者施設を建てたケースがありました。内装も派手で、「田んぼの真ん中にベルサイユ宮殿ができた」などと表現する人もいたほどです。実際に入居者を募集したところ、なかなか集まりませんでした。

 そもそも、この施設が入居者のターゲットとして設定していたのは、農家を中心とする地元の住民です。施設の内装がターゲット層のライフスタイルと合っていないのです。ルイ十四世が使っていたかのような猫足のソファなんて、普通の人はかえって落ち着きません。

 別のあるホームでは、高い天井に鉄製の大きなシャンデリアが吊ってある食堂で、背中の曲がった高齢者がうつむいて食事している光景を目にしたことがあります。私には、どこかみなさんが小さく見えて、窮屈に生活しているような印象を持ちました。

 老人ホームでの居心地は、これまでに自分が属していた社会と関係があります。例えば、いわゆる「山の手」と「下町」のライフスタイルに分けてみると、「山の手」で暮らしてきた人は、自分のプライバシーを重視して、他人の生活にあまり踏み込まないようにするかもしれません。「下町」型でいつもにぎやかな生活をしていた人なら、みんなバラバラに暮らしている人たちに囲まれると場違いな気分を味わうことになるかもしれません。

 高齢者施設を設計・建設する際には、そこに入居してくる人のライフスタイルを踏まえて外観や内装、居室の構成などを選ぶべきです。それができていないと入居者は快適に暮らせません。例えば、東京の下町のある老人ホームでは畳敷きの和室を多数、そろえています。その地域の方の暮らしを見ると、確かに畳の部屋が必要なのです。

 一方で、日本には病院や公民館のように無機質で殺風景な高齢者施設もまだたくさんあります。日本では、派手すぎるか無機質すぎるかの両極端なのです。米国の高齢者施設では、新婚夫婦の部屋かと思うほどフェミニン(女性的)な明るい内装をよく目にします。年を取ってもみんな若くありたいわけです。米国の施設は、入居者のニーズをうまくくみ取っていると感じます。思うに、日本では男性目線で作られた施設が多いのではないでしょうか。高齢者施設では入居者も働く人も8割は女性です。もう少し、女性に配慮した設計、内装、色使いを意識してほしいと思います。