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建設費が1年で7%上昇

ブラジルの大都市圏に住む労働者の月額収入の推移。1レアルは1月22日時点で約44円(資料:ブラジル地理統計院)
ブラジルの大都市圏に住む労働者の月額収入の推移。1レアルは1月22日時点で約44円(資料:ブラジル地理統計院)

 ブラジルでは毎年5~6%ほどのインフレ率を記録するなか、労働者の平均賃金が上昇し続けている。労務費をはじめとする建設費も上がった。例えば、サンパウロ州建設業組合は14年1月7日、13年の1年間で床面積当たりの建設費が7.3%上昇したと発表した。

 発注者の資金調達が難航して、着工の遅れるプロジェクトが続出。支払いを受けられなくなった建設会社が工事の途中で撤退したり、作業員が賃上げなどを求めてストライキを起こしたりする現場が相次いだ。少ない作業員で遅れを取り戻そうと無理をした結果、事故を起こして工事がさらに遅れるという悪循環に陥った。

 W杯ブラジル大会組織委員会は13年11月、競技場などの整備に計80億500万レアル(約3500億円)を要するとの試算を発表した。1年ほど前の12年末時点で見積もった額よりも約9億レアル(約400億円)引き上げた。

 収支計画が甘いとして、銀行の融資を受けられなくなった施設もある。例えば、クリチバのバイシャーダ競技場は、目玉だった開閉式の屋根の着工をW杯後に延期。マナウスのアマゾニア競技場は太陽光パネルの設置を断念した。

 同委員会は、工期に間に合わなかった6つの競技場のうち、サンパウロとクリチバを除く4つの競技場は14年1月末までに完成すると宣言している。

マナウスにあるアマゾニア競技場のウェブサイト。14年1月9日時点で工事の進捗率が95%に達したと書いてある(資料:アマゾニア競技場)
マナウスにあるアマゾニア競技場のウェブサイト。14年1月9日時点で工事の進捗率が95%に達したと書いてある(資料:アマゾニア競技場)

 しかし、楽観はできない。周辺の道路や鉄道など、いまだに手付かずのインフラ工事が少なくないからだ。

 労働組合が強いブラジルでは、夜間や休日の労務単価が平日昼間のおよそ2倍に跳ね上がる。「今のところ工事が遅れていても、建設会社が労務費の支払いが増えるのを嫌って、夜通しで作業するのを見合わせている現場が多いようだ」。戸田建設の現地法人であるブラジル戸田建設の三上悟社長は、競技場の工事に携わっていないものの、現地の状況をこう話す。

 W杯に向けた競技場の建設は、遅れの挽回にまだ多少の余裕があるとみられる半面、これから工期末に向けて追い込みの突貫工事が増えれば、費用がさらに膨らむ恐れもある。

13年12月に撮影したクリチバ市内。道路工事などが続いている(写真:W杯ブラジル大会組織委員会)
13年12月に撮影したクリチバ市内。道路工事などが続いている(写真:W杯ブラジル大会組織委員会)

 次ページからは、ブラジルW杯の会場となる12の競技場を順に見ていく。