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「論理的不整合」「バランスの欠落」と「単純なミス」

 前述のことから見えてくるのは、計画内容そのものだけを対象として個別的に採点評価するのではなく、妥当な判断や論理で説明し得るか否かを重視して採点評価をしているという可能性です。もちろん、そのような評価採点をしていることを裏付ける公的見解はまったくなく憶測に過ぎませんが、こうした計画案評価は、建築実務においては常識的で一般的なことで、実務に即した望ましい採点評価と言えるでしょう。

 こうした視点の元で再現図面を縦覧してみると、少数派の個性的ともいえる計画内容であっても破綻なく説明できそうな答案が合格している一方で、多数派で常識的と思える計画に見えても、計画全体を通じた一貫した妥当な考え方に欠け「つじつま」の合わない部分があるもの、極端に過ぎると思われる判断や内容があるものなどの減点は小さくはなかったようです。

 つまり、「採点のポイント」に示された項目について、妥当な論理をもって計画されていることとともに、他の項目の論理や計画内容との不整合がなく、加えて建築物の全体と部分、部分と部分との関係や部分そのものがバランスよく破綻のない計画としてまとまっていることを求めているように思われます。

 とはいえ、合否結果とともに眺めているとそう思われるものの、長年にわたる製図試験準備の通信添削の経験からすると、このような採点評価を定量的かつ公平に行うことは極めて面倒で難しいものです。計画の考え方や背景について、「計画の要点」に書かれた内容で評価する場合はともかく、図面から読み取るしかない場合には読み取り方そのものにも異論があるでしょうし、その評価はどうしても定性的にならざるを得ず、より減点が少ないと思われる答案作成の方向を示唆することは可能であっても、減点とするか否かの線引きや何点の減点とするかの計量基準を定めることは至難です。ですが、その至難な作業をやり遂げ、何らかの計量基準に従って答案の採点を行っていると信じるほかありません。

 いずれにしても、図面表記上の描き間違いや描き忘れで他の要素に影響を与えないような「単純なミス」と、従うべき問題文の指示との整合性が疑われる要素や妥当な計画方針・計画内容であることに疑義が生じる要素との間には、採点方法に何らかの差異があったような印象を受ける合否結果でした。もう少し具体的に言うと、計画方針の論理的不整合や計画内容のバランス欠落がある場合には、単純なミスに比べて大きな減点となったようです。

 とともに、その「論理的整合」や「バランス」は、従来の製図試験の受験マニュアルや受験ハウツーの範疇に納まるものではなく、より柔軟に応用することも可とする一方で、定型的な対応の生むわずかな歪みに厳しい評価を下すというものであったのではないかと思われます。