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<図面B>

図面
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 この答案で指摘した点の主なものは次の4点でした。順に見て行きましょう。

1)事務室が共用部内に独立して配置されている

 事務室が共用部の中に単独で設けられているだけでなく、給湯・ろ過設備を納める設備スペースもエントランスホール内の展示スペースに面して設けられており、管理部門のまとまりに欠ける計画となっています。そのせいか、 建物西側の「職員」と注記された出入口だけでなく、事務室、倉庫、そして2つの設備スペースにそれぞれ外部からの出入口が設けられています。

 ほとんどの再現図面において、1階は研修部門と共用・管理部門の2つから構成されている計画が示されていました。その2つの部門のゾーニングや動線をどのように処理して1階平面をまとめあげたかは再現図面ごとに様々ですが、「共用・管理部門」のうち共用部門の諸室については研修部門と融合的に扱った答案が散見されるの対して、管理部門の諸室については明確に分離しようとした計画がほとんどでした。その中にあって、この答案は管理部門の諸室をひとつのゾーンとしてまとめようとはしておらず、管理動線が分散してしまっている計画といえそうで、不利な採点となったと考えられます。

2)宿泊室の方位

 アトリエが2階南西角、それに連なる2階南側にアトリエ準備室、さらに眺望への配慮を求められた浴室を2階南に配置したため、結果として宿泊室は北向きおよび東向きの配置となっています。宿泊室について眺望や日照についての条件は明示されてはいませんが、南向きの宿泊室を一切設けていないことは如何なる評価となったのでしょうか。常識的には、南向きの宿泊室を最善として東向きや北向きは幾ばくかの減点とすることが考えられますが、もちろん定かなところは不明です。

3)1階東側の大きなピロティ

 効果的に利用できるのであれば大きなピロティを設けることに何の問題もないのでしょうが、この答案で設けられている1階東側の4グリッド分の大きなピロティは必ずしも効果的なピロティとなっていないように見えます。床面積の合計が設計条件の上限値に迫る大きさであること、1階に「将来対応スペース」「将来増設スペース」といったスペースが示されていることなどから、建物のボリュームに関する適切な見通しを得ぬまま計画を進めたようにも感じられます。「敷地が余る」ことがこの出題の特徴ですが、「採点のポイント」して挙げられている「建物の配置計画」という評価項目には「敷地の有効利用」という視点も含まれていると考えるのが妥当でしょうから、大きなピロティや建物周囲に残る敷地といった外部空間を効果的な計画としてまとめ得ていないという印象は、はなはだ不利な評価につながったと考えられます。

4)室として計画し切れていない浴室、宿泊室B

 浴室は、 面積についての具体的数値の指示はなく、利用人数を示した上で面積適宜と指示されました。この答案では男女合計28m2の浴室が計画されていますが、脱衣室は1m×3.5mの大きさで計画されており、およそ実用に耐え得る十分な計画とは言えないでしょう。

 また、宿泊室Bについても、問題文に示された「12畳」という広さを宿泊室全体の大きさと誤解したのか、十分な広さの計画とはなっていません。

 要求室を機能的に成立し難い狭過ぎる大きさで計画してしまっては減点を避けられないでしょうが、ほとんどの受験生が指示された条件を十分に満足できる大きめの室として計画していることも考え合わせると、はなはだ目立つ明らかな不適切さとして合否に大きな影響を与えるものかもしれません。

 以上の他に、敷地南側にゆとりをもたせた建物配置や一部を陸屋根とした屋根などについても前回の記事では指摘していましたが、全体の印象として稚拙さの感じられる計画であることを付け加えておきます。上記の管理部門諸室の計画やピロティの処理の他に、2階の廊下の計画に見られるような非効率的な動線処理などから感じられる印象です。法的に不適切なわけでも構造や設備に関する工学的な不都合が明らかなわけでもなく単なる印象に過ぎませんが、建築計画における基礎的な部分で未成熟な印象を感じます。もちろん、こうした印象を定量的な評価に結びつけることははなはだ難しいものであり、合否判定に何らかの影響を及ぼすものかどうかも不明です。

 ちなみに、この答案はランク3と評価され不合格でした。

曽根 徹(ぞね とおる/ハンドルネーム:zone)
1962年三重県生まれ。神戸大学大学院工学研究科修士課程修了。電鉄会社、RPBW、設計事務所、専門学校非常勤講師、都市計画コンサルタント、マーケティングコンサルタントを経て、独立。2000年よりメールマガジンを配信し、2001年に一級建築士製図試験支援サイトとして 学科製図.com を設立。現在、有限会社I.L.D.代表取締役として、ウェブコンサルティングやプロデュースを行いつつ、各種NPO理事を兼任。著作に「エスキースアプローチ」「エスキースFAQ」「わかるエスキース」(いずれも学芸出版社刊)などがある

中村 和也(なかむら かずや/ハンドルネーム:kaz)
1958年愛媛県生まれ。京都工芸繊維大学大学院工芸学研究科修士課程修了。航空測量会社都市計画コンサルタント部門、グラフィックデザイン会社、短期大学生活科学科非常勤講師を経て1992年よりアトリエ・クロワートルを主宰。中世ロマネスクの修道院建築遺構探訪を趣味とし、Alfa Romeoで の疾走を生き甲斐とする