PR

 「ピッ」。バゲットにワイヤをつないだショベルカーが合図のクラクションを鳴らすと、レールの上の蔵がゆっくりと動き出す──。埼玉県越谷市の住宅分譲予定地での、蔵の曳き家(ひきや)の様子だ。

高さ約7.2m、重量およそ90トンの木造蔵を、約8m移動した(写真:日経アーキテクチュア)
高さ約7.2m、重量およそ90トンの木造蔵を、約8m移動した(写真:日経アーキテクチュア)
御影石の上に柱を直接載せた構造のため、石ごと曳き家している。荷重20トンのジャッキを10台使用(写真:日経アーキテクチュア)
御影石の上に柱を直接載せた構造のため、石ごと曳き家している。荷重20トンのジャッキを10台使用(写真:日経アーキテクチュア)

 この「蔵のある街づくりプロジェクト」を企画したのは、越谷市を拠点とするポラスグループの住宅分譲会社、中央住宅。推定築150年の蔵を残すに当たって、購入希望者で組合を構成して活用方法を含めてアイデアを出し合う、コーポラティブ方式を採用した。共同住宅では定着してきた同方式だが、戸建て住宅地での取り組みは珍しい。

蔵の内部。母屋と廊下でつながった内蔵として使われており、柱や梁などの構造はしっかりしている。蔵は仮置きして所定の位置に基礎を造成後、もう一度曳き家する(写真:日経アーキテクチュア)
蔵の内部。母屋と廊下でつながった内蔵として使われており、柱や梁などの構造はしっかりしている。蔵は仮置きして所定の位置に基礎を造成後、もう一度曳き家する(写真:日経アーキテクチュア)

 同社が購入した土地と、その隣接地に建っていた3棟の蔵のうち、傷みの激しい2棟を解体。1棟を残して街区づくりに生かす。東武スカイツリーライン(伊勢崎線)越谷駅から徒歩5分という好立地で、通常ならば5戸分の宅地となる。中央住宅の品川典久社長は、「街を豊かにするには、古いものを大切にすることが必要。蔵のある生活に共鳴する層に訴求することで、コミュニティーを形成できれば」と説明する。