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地熱エネルギーの1000km輸出計画

 アイスランドが「地熱エネルギー大国」となっている理由は、島全体がユーラシアプレートと北米プレートが反対方向に動く際に生じた北大西洋中央海嶺の上に存在していることにある。2つのプレートが相互にぶつかり合うこの地域は火山活動が活発で、アイスランド内にも30から40程度の活火山があり、これらの中に蓄えられるマグマによって温められた熱水や蒸気が、地熱エネルギーを生み出しているのである。

3000年前の火山湖・ケリズ(Kerid)(写真:菅昌 徹治)
3000年前の火山湖・ケリズ(Kerid)(写真:菅昌 徹治)

 例えば、レイキャビク近郊に設置されているネーシャヴェトリル(Nesjavellir)地熱プラントでは、地熱によって温められた地下水を暖房用としてパイプを用いて市内に配水するほか、高圧の蒸気を利用した発電も行っている。こうした地熱発電は、アイスランド全体の電力のうち約27%をつくり出しており、約73%を占める水力発電と合わせて国内のほぼすべての電力が生産されているのである。

 これらの豊かな自然エネルギーをめぐっては、イギリスとの間に長さ約1000kmに及ぶケーブルを結び、国内で余ったエネルギーを輸出しようという計画も持ち上がっている。自然エネルギーを国外に売却できるようになれば、2008年以降の金融危機で大打撃を受けたアイスランド経済にとっても望ましい状況となるが、深さ約1kmの海底に長大なケーブルを敷設するためには約43億ポンド(約7300億円)のコストがかかると見込まれており、実現までの道のりは険しい。

ネーシャヴェトリル地熱プラント(写真:菅昌 徹治)
ネーシャヴェトリル地熱プラント(写真:菅昌 徹治)

 なお、地熱エネルギーは思いがけない観光資源もつくり出している。1976年、レイキャビクの西にあるスヴァルスエインギ(Svartsengi)において地熱発電所の工事が行われた際、温められた海水を湛えた巨大なプールが偶然に形成されたのである。ブルーラグーン(Blue Lagoon)と呼ばれているこのプールは、薄い水色に濁った37~39℃の温水で満たされており、日本の温泉に比べると温度は低いものの、沈殿しているケイ素を含む泥の中に身を横たえながら入浴を楽しむことができる。

 現在、このブルーラグーンはアイスランドで最も人気のある観光地となっており、空港からレイキャビク市内に向かう途中にブルーラグーンに数時間立ち寄り、その後市内のホテルまで送り届けてくれるバスツアーなども組まれている。

ブルーラグーン(写真:菅昌 徹治)
ブルーラグーン(写真:菅昌 徹治)