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「創造都市横浜」の現状と課題

 シンポジウム2日目のサブタイトルは「横浜を私たちのグローバルな創造都市にしましょう」。前日に行われた4都市の事例報告を踏まえて、横浜の現状と今後について話し合うことがテーマだ。4人のグローバルゲストとシンポジウムのプロデューサーでありモデレーターである岡田智博氏に加えて、デザインファーム、NOSIGNER代表の太刀川英輔氏、そして面白法人カヤック代表の柳澤大輔氏をパネリストに迎えての議論になった。

クリエイティブノード/ヨコハマ SESSION 2 OUR CREATIVECITIES WITHIN ASIAの2日目の様子(写真:渡邊浩行)
クリエイティブノード/ヨコハマ SESSION 2 OUR CREATIVECITIES WITHIN ASIAの2日目の様子(写真:渡邊浩行)

 太刀川氏は横浜市出身であり、昨年、活動拠点を東京から横浜に移した。柳澤氏は本社機能を鎌倉に置く一方で一昨年、鎌倉に5か所、東京と京都に各2か所あったオフィスを横浜に集約したばかり。いわば、横浜での創造都市づくりを今後担っていくことを期待されるクリエイターの代表的な存在である。

 2日目の議論の中で取り上げられたトピックスは幾つかある。そのうちの主要な論点を以下の5項目に整理してみた。

  • (1)創造都市とは何か? そしてその目的は?

NOSIGNER代表の太刀川英輔氏(写真:渡邊浩行)
NOSIGNER代表の太刀川英輔氏(写真:渡邊浩行)

 創造都市についての議論をする際、最も基本的なポイントは、創造都市のありようとその目的を認識することだ。太刀川氏は米・ポートランドで起きている動きを例に、創造都市を「ベターライフを送ることができる都市」だと言う。

 「ポートランドではいま面白いムーブメントが起きており、創造都市として注目を浴びている。その理由は、都市におけるライフスタイルが想像できて、それに憧れたクリエイティブな人たちが集まるというサイクル構造があるからだ」(太刀川氏)

 ポートランド自体は創造都市を目指してきたわけではないという。クリエイターを含む市民がベターライフを送れる場所をつくり出してきた結果、創造都市と見なされるようになった、というのが太刀川氏の見方である。

  • (2)地域発のクリエイティブの重要性

 (1)で言っているベターライフを実現するためには、文化面、経済面ほか、様々な観点での地域の底上げが必要となる。その場合に、デザインをはじめとするクリエイティブと、都市づくりの現場である地域との関係の持ち方が問われる。では、地域発のクリエイティブとはどのようなものが望まれるのだろうか?

面白法人カヤック代表の柳澤大輔氏(写真:渡邊浩行)
面白法人カヤック代表の柳澤大輔氏(写真:渡邊浩行)

 「クリエイティブによってその街全体の価値が上がるということで言えば、その土地であるという必然性が必要だ。キーマン的な人が1人いれば、アーティストたちは集まってくるし、(創造都市としての)一応の形をつくることだけはできる。でも、そういうやり方ではそこで止まってしまい、それ以上の発展は望めない。それに、熱いムーブメントが起こる土地というのは次々と移り変わる。やはりその土地との必然的な関係を持っていないと、地域発のクリエイティブとして突き抜けたものにはならない」(柳澤氏)

 もう1つ、柳澤氏が重要だと考えるコンセプトがある。それは「オープンである」ということだ。

 「プロジェクトを(コンピューターのソフトウエアのソースコードを公開するのと同様に)オープンソースにして、お互いにシェアすることで地域のクリエイター全員で高みを目指す。そういう場所や仕組みをつくり出せるかが成功のカギになる)(柳澤氏)

 柳澤氏が率いる面白法人カヤックには「地域に貢献するクリエイティブを行う」というポリシーがある。その具体例が、横浜を紹介するスマートフォンアプリ『ちょこっとガイド ヨコハマ』の開発だ。また、本社を置く鎌倉では、地元のベンチャー企業を集めて各々の事業計画をシェアし、情報をやり取りする試みを行っている。一般通念からすれば、自社の事業計画を他社に情報公開することは、なにか特殊な事情がない限り行われない。しかし、地場の企業が個々の情報を共有し、お互いにアイデアを出し合うことで、その地域全体の底上げは実現されるという。

 実際、2011年の東日本大震災後、面白法人カヤックは仙台にオフィスを置き、小さなクリエイティブカンパニーや個人のクリエイターを集めてアプリ開発のプロジェクトを立ち上げた。その結果、仙台はいまやアプリ開発の一大拠点として成長している。すでにこれらの実績を上げた柳澤氏の「シェアがカギ」という発言には説得力がある。