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「創造都市横浜」のこれからの姿

 横浜が創造都市として発展するための課題は、ここまでの5項目をさらに集約して、以下の3点に整理してよいのではないだろうか。そして、これらは横浜に限らず、「まちおこし」「まちづくり」に力を傾ける日本全国の自治体にも該当することだと言える。

  • (1)その都市(地域)ならではのキャラクターの発掘
  • (2)クリエイター、住民、行政の間の密な関係づくり
  • (3)創造都市づくりへの自発的な参加

 冒頭に触れたように、このシンポジウムは経産省による「クールジャパンの芽」と名付けられている提案事業の1つとして開催された。同事業は、その地域の持つ素晴らしい事物をリデザインすることで、さらによいものに変えて世界に発信していく活動のサポートを目的の1つにしている。事業を提案した1者として今回のイベントのモデレーターを担当した岡田氏は、行政との連携という観点から以下のように語った。

モデレーターの岡田智博氏。NPO法人クリエイティブクラスターの理事長を務め、横浜も活動拠点の一つとしてきた(写真:渡邊浩行)
モデレーターの岡田智博氏。NPO法人クリエイティブクラスターの理事長を務め、横浜も活動拠点の一つとしてきた(写真:渡邊浩行)

 「日本では、クリエィティブやコンテンツという話になると、公に任命されたプロデューサーが必要だと言われる。この場合は1人のプロデューサーを立てるという意味だ。しかし、『1人』という考え方には限界がある。1人のプロデューサーに全ての責任を負わせると多様性が失われ、『隙間』がなくなる。むしろ隙間があることで、そこにコミュニティが生まれてパブリックが育つきっかけになる」(岡田氏)

 「今回招いたアジアからのゲストたちは、上から任命されたプロデューサーではなく、自分から地元をよくするためにプロデューサーになった人たちだ。こうした多様性と自発性は、創造都市をつくっていくうえで極めて重要な要素と言える。そのうえで、行政や住民に提案を投げ掛け、コミュニティを巻き込みながらベターライフをつくっていく。これは街に関わりを持とうとするクリエイターにとって、作品制作とはまた別の仕事ではないだろうか」(同)

 「クリエイターが地域のコミュニティに溶け込み、自らのアイデアを認めてもらい、そのうえで行政と一緒になってプロジェクトを進めていくような取り組みが求められている。4人のゲストが行ってきたように、市民の側から『実現可能なアイデアがある。場所を用意してくれれば、連携相手や企業を自分たちが連れてくる』と持ち掛けて行政との付き合いができたら、パブリックなものとして育ち得る。そうしたことを実現していくための仕組みをつくることもクリエイターの仕事の1つだろう。短期間で著しい成功を収めたアジア各都市のストーリーから学ぶことで、横浜はさらに魅力的な都市へと成長できるはずだ」(同)

ジャクソン・タン氏らが2013年のCREATIVECITYプロジェクトで制作したグラフィックス(写真:渡邊浩行)
ジャクソン・タン氏らが2013年のCREATIVECITYプロジェクトで制作したグラフィックス(写真:渡邊浩行)

 「その都市の未来を見せていく、未来をデザインするというクリエイターの責任は大きい。そこにパブリックを巻き込んでいくということを最初から考えて実行し、成果を出しているアジアの各都市の取り組みは参考になる」と岡田氏は言う。

 幸いなことに、日本の都市にはまだ、その土地ならではのユニークさが残っている。その希少な文化的資源を生かしながら、海外の成功事例も取り込みつつ、地域に根差したクリエイティブを世界に向けて発信することができるようになれば、横浜に限らず、日本の都市はもっと面白く希望の持てる場所になるはずだ。