PR

 非住宅建築物に関する改正省エネルギー基準(13年基準)が完全施行となり、約1カ月が過ぎた。非住宅建築物の改正省エネ基準は13年4月に施行され、1年の経過措置があったが、14年3月末に経過措置が終了した。現在、非住宅建築物についてはすべて13年基準を用いて申請書を作成しなければならない。新基準に対応したツールの1つである「The BEST Program(BEST)」の開発に携わった日建設計総合研究所の野原文男所長は、「いよいよ本物の省エネを推進できるチャンス」と意気込む。

 新基準に対応する形で建築確認の申請書類を作成するツールはBESTのほかにも、建築研究所が開発した「PAL*及び一次エネルギー消費量算定用WEBプログラム」などがある。しかし、申請書類を作成するのに加え、簡単に環境シミュレーションまでできるツールは、今のところBESTしかない。「BESTは基本計画から基本設計、実施設計はもちろん、施工から運用段階まですべての段階で活用できる。設備の運転パターンや機器の特性が容易に入力できるため、本当に省エネに効果を出せるように何度でも検証できる」と野原所長は説明する。

 BESTは日建設計のほか、日本設計、大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店などが参画して建築環境・省エネルギー機構(IBEC)内に設立された「BESTコンソーシアム」が開発した。BESTはユーザー登録をし、年間の利用料金を払えば誰でも利用できる。大学の研究者向けには無償で利用できるライセンスも用意している。BESTコンソーシアムの協力を得て、これから4回にわたり、改正省エネ基準(13年基準)に沿った環境シミュレーションを、BESTを用いてどのように実施するのかを解説する。初回は、13年基準とBESTの概要について説明する。

すべてを一次エネルギー消費量に統一

 13年基準では、建物全体の省エネ性能を評価する「一次エネルギー消費量」を導入した。一次エネルギー消費量とは、建物で使うエネルギーを熱量に換算した値のこと。原油や天然ガスなどの化石燃料、水力や太陽光などから得られるエネルギーを指す。電気や都市ガスなどの二次エネルギーも、一次エネルギー消費量に換算することで、異なる単位で表されていたエネルギーを「ジュール(J)」に統一して比較できるようにした。加えて、1999年に定められた次世代省エネ基準(99年基準)は、外皮の断熱性や個別の設備の性能を別々に評価する基準であったため、建物全体で省エネ効果が高いかどうかを評価しにくかった。この問題も一次エネルギー消費量という統一した指標で評価できるようして解消する。

改正後の省エネルギー基準の概要(資料:国土交通省)
改正後の省エネルギー基準の概要(資料:国土交通省)

 改正後の13年基準では、外皮性能については、外皮の断熱性能を示す「PAL(年間熱負荷係数)」を、一次エネルギー消費量と整合性のとれた外皮基準「PAL*(パルスター)」に改める。そのほか、空調設備や換気設備、給湯設備、照明設備、昇降機についてはすべて一次エネルギー消費量で計算する。加えて、太陽光発電などによる創エネルギーの取り組みも評価する。

 一次エネルギー消費量の計算は次のような流れとなる。まず評価対象の建物について、地域区分や床面積などを同じ条件にした基準仕様で「基準一次エネルギー消費量」を算定する。これと実際に設計した建物の仕様をもとに「設計一次エネルギー消費量」を算出。設計一次エネルギー消費量が基準一次エネルギー消費量を下回るようにする。

建物全体の基準一次エネルギー消費量を算出する方法(資料:国土交通省)
建物全体の基準一次エネルギー消費量を算出する方法(資料:国土交通省)