PR

 大成建設は1月23日、社長交代の人事を発表した。4月1日付で建築総本部長を務める村田誉之取締役常務執行役員が社長に昇格する。山内隆司社長は代表権のある会長に就く。トップ交代は8年ぶりとなる。2014年度が最終年度となる中期経営計画の数値目標を達成する見通しとなったことを機に社長交代を決めた。

大成建設の村田誉之次期社長(左)と山内隆司次期会長(写真:日経アーキテクチュア)
大成建設の村田誉之次期社長(左)と山内隆司次期会長(写真:日経アーキテクチュア)

 07年4月に就任した山内社長は「4期8年、社長に在任した。3期6年が適当だと思ったが、残念ながら積み残した未解決の部分があったので、1期2年延長させてもらった。積み残した課題も峠を越し、バトンタッチをするのにふさわしい時期だと判断した」と説明。今後は「社内は新社長に全面的に委ね、私は対外的な活動に注力していきたい」と語った。

 大成建設は08年秋のリーマンショック後、09年3月期に営業赤字に転落した。山内社長は財務体質の改善を進め、収益力強化に取り組んできた。15年3月期の連結の営業利益見通しは540億円と、大手各社を引き放している。山内社長は「新社長には後ろ向きの処理に追われることなく、前を向いて社業の繁栄に努めてもらいたい」と語った。

新国立で「大きな技術革新をしたい」

 バトンを引き継ぐ村田氏は建築部門の出身で、大成建設ハウジング社長、関東支店長などを経験。不振だった住宅事業を再建した手腕を買われた。大役を任された村田氏は、「今、次期中期経営計画を立てている。初年度が4月から始まるので全力投球していく。あくまでも業界のナンバーワンを目指したい」と語った。

 2020年東京五輪に向け、大会関連施設や再開発ビルの建設ラッシュが予想されている。ポスト五輪も見据えた成長戦略をいかに描くか、次期社長の手腕が問われる。

 村田氏は「東京五輪は人生2回目になるが、建設業にいる自分に何ができるかが大変楽しみ」と語った。施工予定者として参画している新国立競技場について、前回の東京五輪で大成建設が技術革新によってホテルニューオータニ(東京都千代田区)の開業を間に合わせたことを引き合いに出し、「技術力を結集した提案で大きな技術革新をしたい。しっかりと施工して五輪を迎えたい」と意気込んだ。

 今後の海外展開については、「国際空港やインフラ輸出など、日本の大手ゼネコンでなければできないことにまず注力したい。海外に行く以上、ローカルな会社や日本の準大手ゼネコンと比べても、やはり一味違うという付加価値を付けないと勝負にならない」と強調。「本社が海外の現場をバックアップして、総力を挙げて一つひとつの物件に取り組む。入手、施工時点からアフターに至るまで国内と同様に距離感をなくしてやっていく」と語った。

 村田氏は60歳。山内社長と同じ東京大学工学部建築学科を卒業。大学時代は内田祥哉研究室で学んだ。同級生には建築家の隈研吾氏や大江匡氏がいる。