非接触給電調理家電など近い将来に実現可能な技術も
「調理が苦手」という人もスマートハウスなら大丈夫そうだ。手順をキッチンがサポートしてくれるのだ。調理台には調理の手順や加熱に必要な時間が表示される。調理台に映し出された作業で知りたい部分の映像を指でタッチすれば、音声付の解説が流れる仕組みだ。
可動式のIHクッキングヒーターで調理するため、調理場の掃除も楽になるという。調理にかかるわずらわしさをなるべくスマートハウスが手助けすることで、「作るのめんどくさい」という心の面までケアをする。家全体が住人の生活のサポート役となることで、せめて家庭内ではストレスを少なく過ごしてもらいたいという作りになっている。
炊事場に並べられた個々の調理用家電をよく見るとコンセントがない。これは電動歯ブラシなどでみられる非接触給電の技術を活用するためだ。キッチンには比較的大きな家電製品が置かれる場合が多く、コンセントの長さなどによって置く場所が限られる。配置を自由にすることで、炊飯器や圧力釜、ミキサーを置きたい場所で使うことができる。
デモ用のキッチンではシンクの全面に黒いプレートが敷かれており、非接触給電エリアであるプレート上ならどの部分でも利用ができる。LED照明を活用したミニ植物工場を置くことで、キッチンで育てたハーブを料理の彩りとして添えるなど、心理面にも配慮したつくりを理想としている。
三菱電機では非接触給電の調理器具などは「ニーズも高く近い将来にも実現は可能だ」と説明する。スマートハウス事業は現時点では、研究推進中のため具体的な製品計画は未定だ。もっとも、こうした先進的な技術で人と物がつながる未来像には、プライバシーへの配慮が重要になる。技術的なハードルは低くても、制度やモラルの問題を乗り越えなければ、本当のニーズに合致するかどうかは未知数だからだ。
ただ、あらゆる分野での高度情報化の流れは止まらない。三菱電機では「やがて家そのものがロボット化する未来が訪れる」(杉浦デザイン研究所所長)と考えて研究を続けている。実際、2015年は住宅で使用するロボットの普及元年になりそうだ。政府は今年から規制を緩和して介護保険を適用するロボを増やす。関連産業の市場規模を2.4兆円に拡大する目算だ。
ロボットと共生する生活空間デザインの研究などを手掛ける東京電機大学の渡辺朗子准教授は「住空間が高度に情報化されれば、空間そのものがロボットのように機能するだろう」と指摘する。帰れば「お帰りなさい、ご主人さま」と迎えてくれる家族の一員のような家に住める日は、それほど遠い未来の話ではないのかもしれない。