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一番のお薦めは「広島ピースセンター」

 これは編集者としての想像だが、山梨氏はこのリードを相当考えて書いている。もしかしたら、納得のいく問題設定ができた建築だけを20選んだのかもしれない。

 おそらく山梨氏が「プレゼンテーションの達人」と呼ばれるのは、自作についても、その問題設定が聞き手の関心を捉えるからだろう。そのために、計画段階から「いかに第三者に理解してもらうか」を意識しているに違いない。

 本書の20の記事のなかで、編集担当者としての一番のお薦めは「広島ピースセンター」(設計:丹下健三研究室、資料館は1952年)だ。この記事のリードはこんな内容だ。

 「丹下健三氏の最初の実作『広島ピースセンター』。陳列館(資料館)から原爆ドームへとまっすぐに伸びる『軸線』が頭に浮かぶ。ところが現地に行ってみると、この軸線は原爆ドームには達していない。丹下氏は、ドームそれ自体には手を付けず、公園内をつくり込むことで、ドームの存在意義を『つくらずしてつくり出した』のだ」

広島ピースセンターのタイトルページ
広島ピースセンターのタイトルページ

 なるほど、と思った人が多いのではないか。筆者もこれまで何度となくこの施設を訪れていたが、ピースセンターから伸びる軸線が実際には原爆ドームまでつながっていない、ということを全く意識していなかった。言われてみると、軸線がつながっていないから、原爆ドームでは原爆ドームだけに思いをはせることができるのだ。

 山梨氏は、そこから設計者である丹下健三の狙いと先見性を読み解く。広島ピースセンターといえば、これまで伊勢神宮や厳島神社との類似性など、日本史的な分析がなされることが多かったが、ここではそれとは全く異なる今日的な意味が見えてくる。

 書店でこの記事だけでも立ち読みしてみてほしい。これを読んだら、買わずにはいられないと思うが…。電子書籍も同時発売したので、今すぐに読みたいという方は電子書籍をお求めいただきたい。20件の具体名を知りたい方はこちらに。