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 2006年4月29日,富山ライトレール富山港線が開業した。市などが設立した第三セクターの富山ライトレール(株)が運営する。

路面電車区間を走る超低床式車両。車両や駅はバリアフリー設計で高齢者や子供連れの利用者に好評だ。路面電車区間では,路盤とレールとのすき間を樹脂で埋めて振動や騒音を抑えるようにした。(写真:日経コンストラクション)
路面電車区間を走る超低床式車両。車両や駅はバリアフリー設計で高齢者や子供連れの利用者に好評だ。路面電車区間では,路盤とレールとのすき間を樹脂で埋めて振動や騒音を抑えるようにした。(写真:日経コンストラクション)

 同線は,JR富山駅の北口前にある富山駅北駅から,日本海に面した北部の港湾地域にある岩瀬浜駅までを結ぶ軽量軌道交通(LRT)だ。

 すべての車両がバリアフリーに配慮した新型の超低床式車両で,上りと下りがそれぞれ10~15分前後の間隔で運行している。

 運行区間の長さは約7.6kmで,新設したのは富山駅北から約1.1kmの路面電車区間だけだ。残りの区間はJR西日本の旧富山港線の線路を使う。

 運行区間全体で5駅を新設し,既存の駅でも超低床式車両に合わせたホームを新たに設置した。

 新型車両の導入や施設の建設など,市が投入した総事業費は合計で約58億円だ。

社名を有料でベンチに取り付け

 「沿線はバス路線も充実していなかった。既存の線路を生かして,コストを抑えて北部の公共交通網を整備する。同時に,地域全体の活性化につなげる」。同市都市整備部富山港線路面電車化推進室の室哲雄室長は,こう説明する。

 市は,富山港線の整備に併せて二つの駅で,駅と周辺地域を結ぶ「フィーダーバス」の運行を開始。九つの駅では,駅前に新たに自転車駐輪場なども整備した。

 同線を地域活性化のシンボルにするために,企業から協賛金を募って駅ごとに,地元の歴史や文化などを紹介するイメージパネルを設置。社名や個人名を刻んだメモリアルプレートをホームのベンチに取り付ける有料サービスも実施している。

 さらに市は沿線で2008年度までに,古い街並みを生かした景観整備のほか,高齢者向けの住宅整備といったまちづくり関連の事業を実施する計画だ。

駅南側の路面電車網と結ぶ

 JR西日本の旧富山港線は,港湾地域での産業の衰退と,高齢化に伴う周辺人口の大幅な減少で,慢性的に赤字を抱えて“廃線寸前”の状態だった。朝のラッシュ時も約30分間隔で運行するなど,サービス水準も低下していた。

 市があえて赤字路線の再生に乗り出したのは,北部を活性化するためだけではない。2014年度以降に予定されている北陸新幹線の開業を視野に入れて,市全体の将来のまちづくりに生かすことがもう一つのねらいだ。

 富山市では,富山駅を境にして南北を鉄道が分断している。駅前の南側は大規模な商業地や官庁街で,既存の路面電車網もある。北側はオフィスビルが立ち並ぶビジネス街。

 南北を行き来する手段は,駅地下の長い通路か,駅から離れた立体交差道路しかない。まちづくりでも,トータルな計画をまとめにくかった。

 北陸新幹線の完成後に,JR西日本は富山駅を在来線も含めて高架化する予定だ。市は,駅が高架化した後に富山港線の線路を延ばし,南側の路面電車と結ぶ計画を検討中だ。

 「公共交通で南北を行き来しやすくなれば,駅周辺を中心に市全体で人の流れが変わるはずだ。富山港線と既存の路面電車とを軸にして,市の南北で連続したまちづくりを従来よりも実施しやすくなる」と室室長は語る。

(注)日経コンストラクション2006年6月23日号「地方から変わる公共事業」から抜粋。