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 「東京都では1964年のオリンピックを目指して社会資本整備が進んだので、ほかの地域より10年ほど早く、更新のピークが訪れる。計画的な維持管理を実施して、更新需要を平準化する必要がある」。こう話すのは、東京都建設局道路管理部の高木千太郎専門副参事だ。

 東京都は2004年度に、橋の維持管理にアセットマネジメントを導入した。さらに2007年度からは、個別の橋の長寿命化に取り組み始めた。長寿命化によって、更新の時期を遅らせることがねらいだ。

 2008年2月に、奥多摩町の峰谷橋と北区の神谷陸橋の2橋について、長寿命化概略設計業務を委託した。なかでも1957年完成の峰谷橋は、寿命の目標を200年と設定。土木構造物で、これほど長い寿命を具体的に想定した設計はほとんどない。

 東京都ではいまのところ、長寿命化の対象として「著名橋*」、「長大橋」、「それ以外で重要な橋」という三つのグループに属する橋を考えている。峰谷橋は著名橋、神谷陸橋は重要な橋のモデルケースだ。

 「最初のケースなので、構造が複雑でなく設計しやすいものを選んだ。例えば、峰谷橋は地盤がいい場所に架かる直接基礎の橋なので、下部構造を考えず、上部構造の長寿命化だけを検討すればよい」(高木副参事)。

 これらの橋の長寿命化が、従来の補修と異なる点は二つある。一つは前述したように、寿命の目標を設定していることだ。著名橋である峰谷橋は200年、重要な橋という位置付けの神谷陸橋は150年だ。

 もう一つは、性能設計を導入すること。高木副参事は、「長寿命化は耐震補強のように、ある基準を満たせばいいという性質のものではない。橋ごとに将来の劣化を予測して、最適なところまで寿命を延ばすという考え方なので、設計の仕様を示す方法はなじまない」と話す。

 概略設計ではまず、各橋の特性や劣化状況を把握し、長寿命化に必要な対策を洗い出す。「峰谷橋は冬季に融雪剤をまく環境で、鋼材の腐食についての検討が必要だ。それに対して、神谷陸橋は交通量が非常に多い橋なので、疲労寿命を考慮した設計が求められる。同じ長寿命化でも橋によって重視すべき項目が異なる」(高木副参事)。次に、橋の特性や寿命に応じた性能設計の方針を決める。そして、概略設計を実施して概算の総工事費を算出する。

 東京都ではこの2橋の設計を皮切りに、2008年度から本格的に長寿命化対策をスタートさせる。

*著名橋:東京都が土木史的な価値などに着目して指定している橋