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 表面被覆や断面修復などに使う工法や材料の開発が活発化している。

 コンクリート構造物の維持管理方法は従来、劣化や損傷が出始めてから対策を講じる例が多かった。しかし最近は、コンクリート表面の保護工法などをはじめとして橋と同様に予防保全の考え方が広まっている。

 芝浦工業大学工学部土木工学科の魚本健人教授は、劣化の進行を遅らせる観点から、構造物が完成したらできるだけ早く表面を被覆して、水や塩化物イオン、炭酸ガスなどの劣化因子の浸入を防止する手法を推奨する。「初期コストはかかるが、事後に対処するのに比べてライフサイクルコストを抑えることができる。最も望ましい工法は、被覆してもコンクリートの表面が見えて、ひび割れに追従できて、耐久性に優れるものだ」。

 コンクリート構造物の管理者が求める補修・補強工法は、既存施設の機能への影響が少なくて、安く早く確実に施工でき、耐久性に優れるものだ。しかし、数多くの工法や材料のなかから、目的や部位、部材に最適なものを選定するのは難しい。

 原因の一つは、補修・補強工法の長期的な効果の不確実性だ。暴露試験や載荷試験などで効果を予測できるケースもあるが、期待ほどの効果が得られないこともある。「補修・補強工法の良しあしは、対象構造物の劣化状況や損傷状況、施工条件、作業員の熟練度などに左右されるうえに、長期にわたる自然条件や交通荷重、維持管理状況などの影響を受けるからだ」と、ショーボンド建設の樋野勝巳技術部長は説明する。

 費用対効果が不透明なことも工法選定を難しくしている。芝浦工業大学の魚本教授は以前、鉄筋コンクリート梁について補修材料ごとに補修費と鉄筋腐食率の関係を調査した。その結果、「単価が高いものより優れた効果を発揮する低単価の工法があった」(魚本教授)。

 土木研究所構造物メンテナンス研究センター橋梁構造研究グループの吉岡淳グループ長は、「今後は、各種工法の長期的な効果を検証する必要がある。補修・補強工事を実施した状況を定期的に調べ、全国のデータを蓄積して、別の工事に生かすことが大事だ」と話す。

 技術者が不足している自治体などでは、不確定要素が多い維持管理業務をどう進めるべきなのか。

 魚本教授は、「税金の無駄遣いをせずに適切に維持管理しようとするなら、点検や診断、補修工法の選定、施工をフルセットで外部に任せるのが望ましい」とアドバイスする。

 多くの専門家は、維持管理技術は新設技術より難しい面があると指摘する。例えば、劣化した部材の強度を評価したり劣化の進行を予測したりすることは、検証できるデータが少ないこともあって難しい。

 維持管理に関する課題の広さと深さを考えると、国交省の有識者会議が提言した技術開発や人材育成の速やかな進展が待たれる。

 人材育成に関して魚本教授は、コンクリート構造診断士やコンクリート診断士などの有資格者を増やし、厚遇することを提案している。